novel 4

□STEPPERS -PARADE-(R‐18)
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(迎えに行けばよかった)

いつのまにか降り出した雪に、俺の許へと向かっているであろう彼女を思い俺は唇を噛む。

『いいか、今日は絶対に、メイドラテに来るなよ』
放課後の生徒会室でくどいくらいに念を押す彼女に不承不承に頷くと、彼女はようやく俺に笑顔を見せる。
『わかってるだろうけど、今日は臨時バイトもなしだからな』
彼女と別れたあとメイドラテに電話をしようと思っていたのに、先手を打たれてしまっては頷くほかなく、俺にため息とともに彼女の後ろ姿を見送ったのだった。

しかし…−−まさか2月も半ばになって、雪が降るなんて…。
彼女を怒らせることになっても、迎えに行くべきだった。
バイトが終了した旨を告げるメールを受け取っていなければすぐにでも外へと飛び出して行くのに、入れ違いにでもなったりしたら彼女を更に寒さに曝すことになってしまう。
俺は酷く落ち着かない気持ちで彼女を待った。



待ち侘びたチャイムに急いで玄関を開けると、驚いた表情で俺を見上げる彼女を抱き寄せる。
胸の中に閉じ込めた身体は冷たく凍え、髪や肩に乗った雪をそっと払うと頬を赤く染めた彼女が口を開く。
「っ…急に何するんだ!早く離せアホ碓氷!!」
温もりを感じる可愛らしい声に安心した俺が彼女を解放すると、彼女は真っ赤な顔で俺を睨みつける。
「こんなところで、お前…っ」
言われてみれば開いたままのドアに苦笑すると、俺は恭しく彼女の手の甲に口付ける。
「じゃあ、部屋の中ならいいんだね?」
改めて抱き直した腰を引き寄せると、赤い顔をした彼女は困ったような表情で目を逸らす。
「そんなこと、聞くなバカ」
さくらんぼのように艶やかな唇から漏れた小さな声を了とした俺は、冷え切った身体を暖めるために抱き上げた。
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