novel 3

□エリーゼのために(R‐18)
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「ねえ…俺と仕事、どっちが大事?」
なんて、我ながら女々しいことは百も承知だけど、言わずにはいられない。
せっかく家に来てくれたのに、涼しい顔で書類に目を通す彼女。
きっと当たり前のように“仕事”と答えるんだろう…。
だけど…−−。

彼女は問い掛けた俺をきょとんとした顔で見つめると、不機嫌そうに口を開く。
「−−何言ってんだ、お前…」
呆れたような彼女の声音に、予感した言葉を覚悟して僅かに身構えた俺は直後、耳を疑う言葉に声にならない快哉をあげた。

相変わらず不機嫌なままで、だけどはっきりとした声で告げられた言葉。
「そんなの、お前に決まってるだろうが」
言い終えてあっさりと書類に目を戻した彼女に、今聞いた言葉は聞き間違いなのかとも、まじまじと見つめる彼女の頬は朱に染まり、俺の視線を感じてか眉間のシワが深くなる。
「…鮎沢、今のって本当?」
柄にもなく緊張に上擦る声が確認を取ろうと彼女にかけられる。
「くどいぞ、当たり前のことを何度も聞くな。あほ碓氷」
俺から目を逸らしたままでいっそう頬を染めた彼女が可愛過ぎて、俺の理性の箍(タガ)は簡単に外れてしまった。



「なっ、何すんだ!!」
いきなり覆い被さった俺に、彼女が抗議も顕(アラ)わに俺を睨みつける。
「何って…鮎沢が可愛いから、我慢できない」
睨みつける彼女に至極真面目な返答を返すと、彼女は赤い顔を歪めて俺を振りほどこうともがく。
「だから、早く終わらせようとしてるんだから、ジャマするなッ」
身を捩る彼女が無自覚に、箍(タガ)の外れた俺を煽る。

「あーもう、なんでこんなに可愛いかな…。」
「何言っ…ッ!」
最後まで言わせずに彼女の口内に舌を滑り込ませる。
逃げる舌を追いかけて、表面を尖らせた舌でなぞり、熱を分かち合うように絡め合わせる。
「っ、ン……あ、ぁ…」
息苦しさに漏れる声すら俺の耳を甘く酔わせる。
「可愛い彼女には、ご褒美をあげないとね…」
俺は口付けの名残を惜しむように自らの唇をペロリと舐めて彼女にそう告げた。
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