novel 3

□RHAPSODY(R‐18)
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真夜中、泣きながら目を醒まし、隣に在る体温に安堵して涙を拭う。
漠然とした不安はいくら身体を重ねても消えず、睦言に囁かれる言葉を、信じたいのに信じきれない自分がいる。

『ずっと一緒に居ようね』

切ないほど真剣な表情(カオ)で、行為の最中(サナカ)囁かれる言葉は、私の不安故か、それとも碓氷の不安故なのか……。

眠る碓氷の髪の毛にそっと触れると、サラサラと柔らかく私の手の平を擽る。
目を閉じて規則正しく息をする碓氷は、普段のシニカルさを消して年相応のあどけなさを浮かべる。

−−−ずっと一緒に居たい。

叶うなら、これからも二人で時間を重ねて行きたい。

だけどその台詞を、私からは言う事ができない。
きっと私以上にその難しさを碓氷は実感しているはずだから…。
だから、言う事が出来ない代わりに、温もりを強く抱き締める。
離れてしまう事のないように……。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

真夜中、温もりに目を醒ますと、彼女の細い腕が俺に巻き付けられ、俺は包まれる幸せに揺蕩(タユタ)う。
瞳を閉じる彼女の顔に残る涙の痕に胸が痛む。
こうして彼女が俺の気付かない間に涙するのは、何度目になるか…。

いつだって一人で思い悩んで、そうして傷ついても曇る事のない瞳は真っ直ぐに俺を見つめる。

不器用で愛おしい彼女。
どうか一人きりで泣かないで欲しい。
温もりも幸せも全部、彼女が与えてくれた。
願うのは、彼女との未来だけ…。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

朝の陽光が柔らかく部屋の中を照らし、私は眩しさに目を醒ます。
抱き締め合う温もりに顔を上げると、珍しく早く起きていた碓氷が私に笑いかける。
「おはよう。よく眠れた?」
優しい微笑みに思いがけず見惚れてしまった私の目尻を碓氷がそっと親指で拭い、そのまま頬を包むように大きな手の平が温もりとともに残される。
「−−涙の痕、泣いてたの?」
慈しむような眼差しにドキリと心臓が跳ねる。
「欠伸…したから、て言うか顔、近い……」
近すぎる距離に吐息が私を擽る。
「ああ、まだコンタクト入れてないからね」
きわめて尤もな碓氷の返答に、それでもドキドキとする胸を落ち着かそうと碓氷の胸に手を置いて押し剥がそうとする。
しかし碓氷はそんな様子に構う事なく私の唇を塞ぐ。
「ッ……」
いきなり塞がれた唇は舌で割られ口腔をヌルリと嬲られる。
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