novel 3

□RUBY(R‐18) 
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「バニーガール?」
何気なく言った私の言葉に、碓氷は大仰なほど眉宇を顰(ヒソ)めて問い掛ける。
何がそこまで碓氷を不機嫌にさせたのか解らない私が、問い掛ける碓氷に頷くとますます機嫌を悪くしてため息をもらす。
「いいだろ?別に…、バニーガールだったら猫耳Day用の衣装を少し直せばいいし、一般的に男は好きだろ?」
「一般的、ね…」
含みを持たせた言い方に、だんだんと苛立ちが募ってくる。
「言いたい事があるなら、はっきり言えよ」
不機嫌な碓氷を睨みつけると、碓氷は口角を上げて形だけの笑みを私に向ける。
「別に。鮎沢がそれでいいと思うなら、いいんじゃない?」
「ああ。じゃあ、そうさせて貰うからな」
結局、碓氷の不機嫌の理由を知る事ができないまま、その話題は終わりとなった。



「大成功ね、美咲ちゃん」
満席の店内を見渡し、さつきさんがほくほくと私に笑いかける。
「最初にバニーって聞いた時は、ちょっとベタかな?って思ったけど、まさに王道に勝るもの無しね」
賑わう店内に、イベントの相談を持ち掛けられた責任を果たせた気持ちで頷くと、さつきさんが少しだけ困った顔を見せる。
「ただ…、碓氷君、怒ってるのよね?」
毎日客として閉店まで私を睨みつける碓氷の様子にさつきさんが心配そうに問い掛ける。
「怒ってると言うか……、すいません。店の雰囲気が悪くなるから来るなって言ってるんですが…」
「どうしてかしら?こんなに可愛い美咲ちゃんなのに…」
不思議そうに首を傾げるさつきさんに曖昧に頷き、面白くなさそうに座る碓氷に視線を送ると碓氷は目を逸らす事なくじっと私を見つめる。
責めるような視線に感じる居心地の悪さは、ここ数日のイベント期間中ずっと私を苛み、かといって理由もわからず徒(イタズラ)に時間だけが過ぎて、それは最終日の今日も変わらない。

あんな風に睨みつけるくせに、不機嫌を隠しもしないのに、バイトが終われば碓氷はまるで義務かのように私を家まで送り届ける。
「−−−気に入らなければ来なければいいのに…」
今日もあの憂鬱な時間がくるのかと、ため息混じりに呟いた。
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