novel 3

□RUBY(R‐18) 
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「−−遅い…な」
緊張感の漂う空間に我慢できずに口を開くと、離れて座っていた碓氷が静かに私に近付く。
「鮎沢…」
低く囁く声が、何故か私に恐怖を抱かせ身構えてしまう。
碓氷は強張る私を気にもせず抱き締めると、大きく開いた背中をスッと撫でる。
「お前…怒ってたんじゃないのかよ」
首筋に顔を埋める碓氷に戸惑いをぶつけると、碓氷は耳に息を吹き掛けながら耳朶を甘く噛む。

ゾクリと痺れる感覚に飲み込まれまいと私は碓氷の胸を両手で押す。
「ここを何処だと思ってるんだ。店長だっていつ帰ってくるか、わからないんだぞ」
だけど私を抱き締める腕の力が抜ける事はなく、碓氷の舌が首筋を這う。
「止め…っ」
無言のまま続けられる行為に私の中で恐れが生まれる。

何故、さつきさんは二人で留守番なんて……。
何故、碓氷は了承したのか……。
何故、碓氷はここまで怒りを……。
いくつもの疑問が浮かんでは消え、答えがでないまま私は碓氷の腕から逃れようと身を捩る。
「ッ…!」
碓氷の唇が開いた胸元に吸い付き、隠せない場所に所有印が付けられる。
「やっ、止めッ」
慌てる私に向けられる碓氷の瞳は肉食獣のそれで、私は捕食される恐怖に怯えて震える。

「碓氷…、お願い……何か言ってくれ…」
無言のまま身体を弄(マサグ)る碓氷に涙が零れそうになる。
碓氷に潤む瞳を見られまいと背けた首筋に噛み付かれ、痛みに喉の奥で悲鳴が上がる。
「っひ、や…だ……、痛ッ、い」
訳も分からず罰される理不尽さに、とうとう堪えていた涙が私の眼(マナコ)から落ちる。

一度零れ落ちた涙は涸れることなく次々と溢れ、噛み締めた唇から嗚咽が漏れる。
碓氷はそんな私の様子にようやく腕の力を緩めて口を開く。
「……鮎沢はさ、バニーガールの意味、わかって着てる?」
耳元で囁く碓氷にゆっくりと頷いて返事をする。
「アメリカの、ナイトクラブの衣装…」
私の答えに碓氷は大きなため息をつくと、テーブルの上に私を張り付けるように押さえ付ける。
「やっぱり、わかってなかったんだ?」
すっかりいつもの調子に戻った碓氷は、怪しい微笑みを私に向ける。

テーブルからはみ出した脚を碓氷の膝が割って、そのままドロワーズに擦り付けられる。
「やっ、足で…なんて…」
腕を押さえ付けられ、抵抗らしい抵抗のできない私が碓氷の足から逃れようと身を捩ると、碓氷は押さえ付けた手首に痛いくらいに力を籠める。
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