導かれし者達

□第二章 おてんば姫の冒険T
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 広大な領土を持つ国、サントハイム。
 国家としても安定し、何一つ不穏な点など見つからない――平和な国だった。

 ただ一つ、王の心中を除いては。













「アリーナ、じぃから聞いたのだが力試しの旅に出たいと申しておるとか」

 王宮の玉座で、わたしのお父様――サントハイム王がそう言う。
 わたしは王の傍らにいる張本人、ブライを睨んだ。

 だけどブライは知らんぷり。

 告げ口したのね…もう、ブライなんか大っ嫌い!


「ならぬ!そんな事はこのわしが許さん。
――わかったら、お前はもう部屋に戻りなさい」

「…分からない。――分からないわ!!」

 お父様は、いつもそればっかり。

「いいじゃない少しくらい! お父様はどうしていつも―」

「―ならぬ!」


 ぴしゃりと言われて、わたしは肩を竦めた。
 やっぱり、お父様には怯んでしまう。


「…ならぬ、アリーナ。―お前は女。しかもこの国の姫なのだぞ。
外には魔物もおる。そのような事はこのわしが許さぬ!」

 言い返してもお父様には強わないと思うと、言葉はあってもそれが喉から出てこない。

 それでもやっぱり悔しくて、奥歯を噛んでお父様を睨んだ。

「――分かったな」
「…わ…」

 悔しい。卑怯なわたしも、言い返せない事も。
 でも、わたしは答えなければいけない。

「―わかったわ…」
「…なら、もう良い。下がりなさい」

 怒鳴りだしたくなるようなぐるぐるした気持ちを飲み込んで、わたしは下の階へと向かう。

 勿論、下にクリフトがいるから。
 クリフトは昔からわたしの話を聞いてくれた。
 王女だからじゃなくて、わたしの体を心配して止めてくれる。

「クリフト!!」
「はいっ! 申し訳ありませ―…って、姫様っ!?」

 でも、わたしを見た途端顔が赤くなるのは…なんでだろう?



 
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