ころきみ。
□シェーナの呪い
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朝、目が覚めるとお姉ちゃんはリビングでコーヒーを飲んでいました。
昼夜逆転生活を送っているお姉ちゃんには珍しいことです。
私のお姉ちゃんはシェーナ・リールといい、珍しく冒険者ギルドに属していないフリーの呪術師で、とても美人です。
でも少し変人で、恋人ができた試しは一度もありません。
「お姉ちゃん、おはよう。」
「あらエナ。おはよう。」
私もコーヒーを飲もうと思い、台所に向かいます。
私は僧侶として冒険者をやっており、家に中々帰りません。
そのためお姉ちゃんと朝にコーヒーを飲むなんて中々できることではないのでそうしようと思いました。
「お姉ちゃん、コーヒーのおかわりは?」
「もらおうかしら?」
「わかった。」
ついでに朝ご飯も作ってしまおう。
お姉ちゃんのことだから、何もないかもしれないけれど私は食料庫を見ました。
――あるのは干からびた野菜と異臭を放つミルクだけ。
予想外です。
その時、お姉ちゃんはが私の背後に立っていました。
振り返るとお姉ちゃんは笑顔です。
「ごめんね。」
まるで、お姉ちゃんは私のおやつを勝手に食べた時のように言いました。
「呪いかけちゃった。」
「――え?」
しばらく脳が考えるのを拒否します。
でも、お姉ちゃんは軽く言っているし。
軽い呪いなのかもしれません。
「――どんな?」
「好きな人、殺したくなっちゃう呪い。」
ウィンクを投げかけるお姉ちゃん。
私の口はわなわなと震えます。
だって。
「ちなみに私じゃ解く方法がわからないから。」
「あ、あ――。」
間抜けな声が口から漏れます。
そして。
「嫌あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
絶叫が私の口からほとばしりました。
「いや、本当にごめんね? 解き方も載ってると思ったら載ってなくてさ。」
「嫌、嫌! 解いて!」
「だから無理だってば。」
「だ、だって!」
私の好きな人。
それは私の仕事の、冒険者としてのパートナー。
そして大事な大事な幼なじみ。
「ルーク――。」
ぼろぼろと涙が溢れます。
ルーク・キマイン。
私の大好きな人。
私の大事な幼なじみ。
私の大切な冒険者としてのパートナーの剣士。
「うっうっ!」
「エナ! 何かあったのか!?」
ドアを叩く音が聞こえる。
私が困っている時にはいつでも助けてくれるルーク。
お姉ちゃんはゆっくりとドアに歩み寄ると、ドアを開いた。
ルークが転がり込む。
「エナ! 大丈夫か!?」
「ルーク――。」
私は顔を上げる。
どくん。
心臓が大きく脈打った。
すぐ側にある大丈夫なルークの顔。
恥ずかしくて照れ臭くて嬉しくて。
殺したくて。
どうしてだろう。
憎しみはない。
むしろ大好き。
それなのに。