夢主交流部屋
□ナミツさんと
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「笑顔って、どうやったら作れるんですか」
たまたまナミツと公園で会って、手持ちを遊ばせて、ベンチに座ってその様子を見ていたら、突然そんなことを問われた。
じゅるる、と私の飲んでいた紙パックのアイスココアから音が止む。
思わずストローを噛んでしまった。
「…笑顔を、作る?」
「はい」
「何で」
「私も、ゴールドみたいになりたいから」
ゴールド。レッドとは違う輝きを持つ、太陽のような、孵す者。
ナミツは彼に憧れていて、傍にいて、愛されている。
この子は感情表現が得意でないから、きっとゴールドみたいに笑いたいって思ったんだろう。でも、
「笑顔はね、表情は、作るものじゃないよ」
「………」
「表情は、気がついたら無意識にそうなってるものだから」
「でも、」
ナミツが目を伏せる。表情はいつもと変わらないけど、多分、いい気持ちではないんだろうな。悩んでる、みたいだし。
私からすれば、ナミツだってわかりにくいけれど、ちゃんと笑えてるように見える時がある。
手持ちといる時。ゴールドといる時。
この子は、凄く輝いて見えるんだ。多分、本人が気づいていないだけで。
ぽんぽん。ナミツの頭を撫でて、私は立ち上がった。
空になった紙パックをゴミ箱に向かって投げれば、カコン、ナイスゴール。
「ナミツ、ケーキ、食べに行こうか」
「え?」
「甘いものって、食べると幸せにならない? それともあんた、甘いもの嫌い?」
「いえ、」
「じゃあ行こう。凄く美味しい所知ってるから」
やはり女の子、きらきらと、瞳が光を帯びた。
表情はわかりづらくても、目が、ちゃんと感情を表してくれる。
焦らなくても、いいんだよ。
笑顔は作るものじゃなくて、そうなるものだから。
それに、あんたのこと、ゴールドはちゃんと理解してくれているはず。
いつかきっと、ナミツも笑えるようになるから。
(笑いたい少女と笑えなかった少女の話)