サイダー飴


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ジーパンにTシャツ、長袖のパーカーという無難な格好で玄関を出る。
パンプスの踵を踏んでしまわないように、きちんと履きながら鍵を閉めた。






渡辺の家へは歩いて三分。結構近い。

『今出たから』
という短いメールを送れば、一分以内に
『オッケーいつでも準備オッケーだから!』
と返信が届く。
それを確認して、ジーパンのポケットにしまう。



結構年季の入ったインターホンを鳴らすとすぐに扉が開いた。

「よ!入れ入れ」
「ん。お邪魔します」



私達は二階の部屋に向かった。
階段を上がって一番奥の部屋が渡辺の部屋。
「どーぞ」
「うわ、相変わらずちゃんとしてる」
「うわってなんだよ。良いだろ、散らかってるより。」
「勿論。今のは凄いのほうの『うわ』だから」

私の定位置であるふかふかなソファーを、家主よりも先に陣取る。

「ねぇ、このソファーと私の固いソファー取っ替えない?」

「断固拒否。ありゃもう骨が当たって痛いだけだ。捨てろよ。」

「ちぇー」


私は、用意されていた麦茶をコップに注いで一気に飲み干した。

「よし、やろっか!」
「うん。クロックタワー3がやりたい。」
「おう」

渡辺は慣れた手つきでディスクを挿入する。
ほれ、とコントローラを渡される。

「ありがと。これ面白そうだね。」
「まぁ面白いっちゃ面白いな」


「…渡辺最初にやる?」
「いや、おれはもう全クリしたからいいや。」
「あ、そ。」


ちょっと怖いからなんて死んでも言わない。
渡辺に笑われるのはなんとなく嫌だから。
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