円堂さん受け
□嘘と冗談
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「俺、実は人間じゃないんだ。悪魔なんだよ」
呆ける円堂君を余所に俺は、君の魂を奪いに来た、と続けた。
俺は呼吸をするかのように嘘を吐く。
冗談、と形容しても構わないかもしれないが、円堂君を傷付けたくて言っているのだ。
だからそれを『嘘』と思い込むことにしている。
「あと五分でいただくよ」
適当な数字を即席で決め、いかにもそれらしく言ってみる。
とは言えそれは本や小説を真似ただけであり、悪魔でも何でもない俺にはどんなものかも解らないし、いるかどうかすらも解らない。
若干厨二的なノリがイタいのは自覚しているが、涼野の所為で培われてきたのだ、と正当化している。
しかしそう考えると、常識人なままでいる南雲のことを尊敬しなければならなくなるのだが。
「残り三分になったよ。何か言い残したことはない?」
「…………」
「ねぇ、円堂く…」
「ヒロト、好きだよ」
こう告げられるのも何度目だろう。
宇宙人として別れの挨拶に来た、と言った時も、死神として迎えに来た、と言った時も、同じ様に告白された。
それを言う時の円堂君の挙止動作も毎回同じで、今も変わらず微笑んでいる。
困ったような、それでいて楽しそうな、複雑そうなその表情は相変わらず可愛くて、見てて飽きることなどは勿論有り得なく、何度でも見たいと願う。
一方で、それを見る度に俺はどうすればいいのか解らなくなり、結局毎回同じ言葉を紡いでしまう。
「……俺もだよ」
それを聞いた円堂君のはにかんだ顔もやっぱり可愛くて、また明日も嘘言おうかな、なんて思ってしまう俺は救えない。