円堂さん受け

□嘘と冗談
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「俺、実は人間じゃないんだ。悪魔なんだよ」

呆ける俺を余所にヒロトは、君の魂を奪いに来た、と続けた。




ヒロトは呼吸をするかのように冗談を言う。
嘘、と形容出来なくもないが、彼の言葉で傷付いたことはない。
だからそれを『冗談』と捉えることにしている。

「あと五分でいただくよ」

しかもそれは毎回、何となく納得してしまうのだ。
目にも鮮やかな赤い髪、日に焼けぬ白い肌、うっそりと細められた緑の目。
それ等から形成される美貌は、俺からして見れば人間離れしたもので、あぁ悪魔がいたらこんな感じなのかな、とボンヤリと思ってしまうのだ。
若干厨二的なノリなのは些かイタいが、涼野の影響だと思えば納得も容易い。
常識人な南雲の苦労まで鑑みてみれば、いっそ微笑ましくも思える。

「残り三分になったよ。何か言い残したことはない?」
「…………」
「ねぇ、円堂く…」
「ヒロト、好きだよ」

こう告げるのも何度目だろう。
宇宙人として別れの挨拶に来た、と言われた時も、死神として迎えに来た、と言われた時も、同じ様に告げた。
それを聞いたヒロトの反応も毎回同じで、今も驚いたように目を見開いている。
嬉しそうな、悲しそうな、複雑そうなその表情はどことなく可愛く思えて、いつもの格好良さなど陰に潜めたその様子は、それこそ何度見ても飽きない。
ウロウロと目をさ迷わせた挙句の言葉も一緒だ。

「……俺もだよ」

ほんのりと頬を染めて言う様がやっぱり可愛くて、また明日も冗談言ってくれないかな、なんて思っている俺は救えない。
 
 
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