テニプリ
□sleeping beauty
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〈 跡部 〉
「お前ら、一体何をやってやがる!」
部室に行ったきり戻ってこないレギュラー達を、ドアを開けるないなや怒鳴りつける。
と、目に飛び込んできたのは、ソファに横たわり、すやすやと寝息をたてる名無しさんの姿だった。
いつもキラキラしている瞳はまぶたに隠され、少し幼い印象を与えるが、しどけなく開いた唇が妖艶さを醸し出している。
そんな名無しさんの姿を見て、レギュラー陣はニヤつく頬を抑えられない。
ちっ
跡部は小さく舌打ちすると、レギュラーたちの視線をよそに名無しさんのかたわらに膝をついた。
少しだけ頬にかかった髪をそっと指先で直してやりながら、耳元に唇を寄せた。
「名無しさん」
とびきり甘い、優しい声で囁くと、名無しさんはぴくり、と体を反応させる。
レギュラー陣はそんな様子を固唾を飲んで見ている。
「名無しさん……ほら……こっちに来い」
「ん……あ……けい……ご?」
名無しさんが跡部の名を読んだ瞬間、その場に動揺がはしる。
景吾、って言った?!
そう言えばいつも苗字と呼んでいるはずの跡部も、名前を呼び捨てだった……と、レギュラー陣が考える暇もなく、目の前ではあり得ない場面が展開されていた。
「けいご……」
甘えた声で名を呼んだ名無しさんは、ゆっくりと手を伸ばし跡部の首に絡めると、肩口に顔をうずめる。
えええっ!!!
ももも、もしかしてこの2人……!
声にならない声をあげるレギュラー陣を一瞥すると
「グラウンド20周の後、試合形式での練習だ」
何食わぬ顔で跡部は告げた。
何も言わずにフラフラと出て行く部員たちを見送りながら、跡部はふんっ、とほくそ笑む
「勝つのは俺様だ」