テニプリ

□やっぱり、そうだ
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そこには、完全に固まってしまっている永四郎の姿。

「え、永四郎?」

そんな名無しさんの呼びかけに、ハッと自分を取り戻したようにこちらを見た。

「名無しさん……」

「は、はい?」

なぜだか鬼気迫る顔で両肩をつかまれたと思うと、ものすごい力でぎゅうぎゅう抱きしめられる。

「ぎゃっ」

「名無しさん……オレには……オレには君しかいない」

「ちょっ……苦し……」

「君だけだ……絶対に一生離しませんよ」

「苦し……い……」

永四郎が何を言っているかわからないまま、名無しさんは意識を手放した。








「え⁈」
「って、永四郎が言ってたさー」
「プロポーズは済んでる、って」

凛と裕次郎の言葉に目を丸くする。

「何それ…そんなの知らない」

ぼそっとつぶやく名無しさんは、後ろから伸びてきた腕にいきなり拘束される。

「ひっ」

「ひどい人ですね。オレの一世一代の告白を覚えていないなんて」

「永四郎」

びっくりして止まりそうだった心臓は、振り返ったところにあった視線を受け止め、縮み上がる。

「これは……一晩かけて思い出してもらうしかありませんね」

ニヤリと笑う口元に反して、その目は全く笑っていない。

「え、え」

「ご愁傷さま〜」
「チバリヨ〜」

ヒラヒラと手を振って去っていく2人に、助けを求めようと差し伸べた手を取られる。

「カナサン、名無しさん……」

後ろから抱きしめられたままチュッ、と頬にキスを落とされ、名無しさんの心臓はトドメを刺された。
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