テニプリ

□やっぱり、そうだ
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「木手〜」

「…………」

「ねぇ、木手〜」

「…………」

部室で調べ物をしていた名無しさんは、何度呼んでも返事をしない木手をいぶかしんで顔を上げた。

すると、不機嫌オーラ全開の木手とばっちり目が合う。

文句を言おうと開きかけた口を閉じ、名無しさんは首を傾げる。

「……木手?」

頭の中で不機嫌の理由を考えてみるけれど、まったく思いつかない。

じっと木手の顔を見つめていると、呆れたようなため息をつきながら、向かい側にいた木手が名無しさんの隣にするりと回り込んできた。

「……オレは」
「?」
「オレは君の何ですか?」

真っ直ぐに自分の目を見つめて尋ねてくる木手の言葉を反芻して、名無しさんの頬はみるみる真っ赤に染まっていく。

「名無しさん」

恥ずかしさで視線を逸らそうとするのを許さない、とばかりに名を呼ぶ。

「もう一度聞きますよ。オレは君の何ですか?」

「……か、彼氏……です」

ヘビに睨まれたカエルの様に、冷や汗をかきながら小さな声でそう告げる。

「その彼氏を、いつまで苗字で呼ぶつもりですか?」

恨みがましい目をされ、名無しさんは視線をを泳がせる。


付き合い始めて半年。

クラスメイトとしての時期が長かったせいで、どうしても苗字で呼んでしまう。

「もう『木手』は卒業してくれませんか、名無しさん……」

机の上にあった手をそっと握りながら、耳元でささやく。

「他人行儀で……寂しいじゃないですか」

名無しさんの肩に、コツンと額をつけてつぶやく。

ズルい。
その甘え方はズルい!

心の中で叫びながら、もうこんなことされたら呼ばないわけにはいかないじゃん!と意を決して口を開く。

「……ろ」

ポツリと漏らした声に、木手がピクリと反応する。

ううっ、恥ずかしいっ。

平古場とか甲斐が呼んでる、ああいうイメージだ!

「……え……しろ」

いきなり始めたイメトレが役に立つわけもなく、なかなか声に出せない。

でも。

「え…永四郎!」

半ばやけっぱちで、叫ぶように呼んだ名前。

「……………?」

あれ?

いつまでも反応がないのをいぶかしんで、知らぬ間につぶっていた目を開けると……
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