テニプリ
□手塚 2
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「……じゃ……か」
「そんな……て」
部室から聞こえてくる声に、菊丸はドアノブにかけていた手を止める。
『誰がいるのかにゃ〜』
聞き耳を立てていると、どうやら手塚と女子の声。
青学の男テニには女子マネージャーはいないので、当然相手は部外者だ。
『あの手塚が連れ込んだ女子って、やっぱりあの子かにゃ??』
ものすごい好奇心がむくむくとわいてきて、菊丸はそーっと扉を開けた。
そこで菊丸は、信じられないものの数々を目撃することとなる。
「今日は遅くなりそうなんだが……待っていられるか?」
イスに座った手塚は、傍らに立っている名無しさんを見上げて言う。
その腕は名無しさんの腰にしっかりと回されている。
「国光、約束したでしょ?」
そんな言葉に、不満そうに名無しさんを見上げる手塚。
「全国大会が終わるまでは、送るのはナシ、って」
ある日突然、一緒にいるようになた二人に、誰もが驚いた。
「あの手塚に彼女が?!」
と、初めこそ大騒ぎになっていたが、やっと噂も落ち着いてきた。
教室にいる手塚と名無しさんは、申し訳ないけれど、付き合っているようには見えない。
手塚の態度が付き合う以前と何ら変わりがないからだ。
『オレだったら、ずーっと彼女にひっついてたいにゃ〜。そんでそんで、あんにゃことしたり〜、こんにゃことしたり……』
常々そう思っている菊丸は、部活が終わった後、毎日のように一緒に帰っている二人を見ても、どこか半信半疑だった。
「名無しさんはオレと一緒に居たくないのか?」
手塚はそう言うと、名無しさんの胸に顔を埋める。
『にゃにゃにゃ!て、手塚が甘えてるにゃ!!』
「そんなこと言ってないでしょ?」
ゆっくりと、柔らかい手塚の髪を撫でながら、名無しさんは言い聞かせる。
「もちろん、一緒に居たいよ?でもね、ちゃんと体を休めて欲しいの。毎日練習もハードで疲れてるでしょ?」
「そんなにヤワな体はしていない」
「国光……」
腰に回された腕の力が強くなる。
「おまえが……名無しさんが足りないんだ……」
子どもが甘えるように額を名無しさんに押しつける手塚。
『にゃにゃ!!て、手塚がわがまま言ってる!!』
そんな光景を目の当たりにして、菊丸は固まる。
「おまえを抱きしめたい……おまえに触れたい……おまえと……一つになりたい」
『いいい、今、すごいこと言った……一つになりたい、って……』
菊丸は、その場面を思わず想像し……想像し……想像できない。
『ムリだにゃ……手塚が女の子とエッチしてるところにゃんて……』
「それは……ワタシも同じ」
「じゃあ」
「だ〜め。約束は約束」
「…………」