遙か5
□かわいい君だから
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「んんっ……あっ」
熱い吐息と、くちゅくちゅと淫らな水音が響く寝室。
「ねぇ……ここは?」
「あんっ」
蜜壺の一番感じるところをかすめるように擦る小松の長い指に、名無しさんは小さく体を揺らす。
「どうしたの?腰がすごく揺れているよ?」
クスリと笑う小松の目には、欲情のかけらも見つけられない。
「ほら、じゃあこっちは?」
「ひあっ」
触ってほしくて尖りきっている胸の先端に、小松はふうっと息を吹きかける。
そんな少しの刺激にもびくびくと体を震わせる名無しさんを見て、小松は意地悪な笑みを浮かべる。
「今……膣内(なか)がきゅってなったよ?」
耳元でささやき、最後に耳たぶにそっと歯を立てる。
ふるっと震える名無しさんの耳に、さらにささやく。
「さあ、神子殿……私にどうして欲しい?」
「……つっ」
「ちゃんと……教えてくれないと、ずっとこのままだよ?」
「…………」
「神子……名無しさん?」
黙り込んだ名無しさんは、突然、小松の胸を押し返した。
「名無しさん?!」
「……ない……もうしない!!」
「え」
「小松さんとはもうしない!!」
くるりと背を向け、小さく丸まってしまった名無しさんに、小松はあっけにとられていたが、すぐにやり過ぎたことに気づく。
「名無しさん」
「イヤ!触らないで!」
完全にへそを曲げてしまった名無しさんに全身で拒まれ、小松はかける言葉を失ってしまった。
自分より十も年下の少女は、心も体も真っ白で、まっすぐだ。
自分が今までしてきたような、駆け引きや恋愛ごっこには慣れていない。
それがとても愛しくもあり、どうもいじめてしまいたくなる部分でもあるのだが、全てにおいてウブな名無しさんにはそれが過ぎたようだ。
「名無しさん……ごめん、ごめんよ」
丸くなった背中をそっと抱きしめると、ますます体を小さくする。
「君がかわいくて……かわいすぎて、意地悪が止まらなかった」
「…………」
「悪かった……だから私を拒まないで……」
君に嫌われたら、私はきっと息ができなくなって死んでしまうよ。
そう耳元でささやく。
名無しさんはまるで湧き水のようだ。
小松の体の中をどんどん満たして溢れ、全く枯れることがないでいる。
その存在がなくなってしまったら……そんなこと考えたくもない。
「……は」
「ん?」
「小松さんは……」
「うん?」
ぽつりぽつりとつぶやき始めた名無しさんを、さらにきゅっと抱きしめ、耳を寄せる。
「こういうの慣れてるんだろうけど……わ、わたしは……っ」