TOA short
□ナタリアと彼
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あなたは、今……
*ナタリアと彼*
城壁に切り取られ、飛行譜石がきらきらと輝く、まるで絵のような夜空。
彼女はいつの間にか、こんなにも美しい風景に何も感じなくなっていた。
【あの日】からもうじき1年が経つ。
夜の空を眺める日々は、とてつもなく長い年月に感じられた。
開け放った窓から自分の部屋へ、夜の澄み切った風が流れ込んだ。
『いい加減夜空にもあきてきましたわ……。』
ため息混じりに視線を落とすと、灰色の墓石が月の光に照らされていた。
いつまで待てばいいのでしょう。
やはり【彼】は還ってしまったのでしょう。
もう二度と、【彼】は還って……。
あぁ……
う゛ぅぁぁぃああっ
言葉に、なりませんわ。
お願いですわ。
わたくしのもとへ還ってきてくださいませんか。
わたくしの心が、
壊れる前に……。