一転

□対戦ゲーム
3ページ/3ページ


「じゃ、やろっか」

さっきまで葉がいた場所に父さん(朔也)が優しく笑いながら座っている。
…勝った。
そんな彼の笑顔を見て、思う言葉はそれしかない。
だが大丈夫か?
さっき葉と戦った時にあたしの強さは見たはずなのに…。

まあそれもお父さんの優しさなんだよな!

「よし!いくぞさっくん!」

「おう!!…え、さっくん!?」

さっくんと呼ばれ何故か焦った父さん。
一回目まぁ予想通りあたしの勝ち。

「わー、強いね真ちゃん」
「まあな!」

えっへんのポーズ。
父さんはなんだかめちゃくちゃ驚いている。
そして、うんと頷くと「本気でいこっと」
と誰にも聞こえない小さな声でそう言った。




………………。
その後の事、衝撃的すぎてよく覚えてない。
覚えている事はぱっつんがあたしに師匠がいた時の事を思い出してか

「そうだあ!真には師匠が…!」

「ただいま…」

「え?師匠が何だって?」

ぱっつんが叫ぶ途中で葉が帰ってきたかと思えばそこでゲームセットしてしまった事と、
なんだかよく分からないすごい技をお父さんが使いまくってたという事。
これほどまでに自分が惨めだな思う事はない。

「あ、真ちゃん大丈夫?」


「…師匠ごめんなさい…出直して来ます…。」




この、葉と真のどーでもいい会話から始まった不幸はとんでもない形で終わってしまった。
そしてあの日の事は、
朔也以外の3人で「忘れよう…」と固く約束された。


あの、本気の顔で速すぎて見えない指でボタンを操作していた彼の横顔と、
「大丈夫?」
と聞いてきた時の心配そうではなく、怪しく笑っていた彼の顔だけは…


ずっと、忘れる事ができない。





対戦ゲーム
−end.


↓あとがき
(お待たせして申し訳ありません。久しぶりの更新です。朔也というキャラが出来上がってきましたね。…ひどい方向に行きそうだ…)
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ