一転

□対戦ゲーム
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「寒い。何でこんなに寒いんすかおかん」

「冬だからでしょ。てかおかんちゃうし」


とある休日。
自由人とおかんが寒さを必死にこらえながら二人並んで歩いていた。
行き先は葉の家。

「ねぇ。何で柚木んち行かなきゃなの?」
「まぁ、ついてくれば分かる」
「えぇ…気になるわぁ…」

ぽつりぽつりと交わされる会話。
なぜ、休日という貴重な一日を使ってまで彼の家に行かなければならないのか。
まぁ、それには大事なような…どーでもいいような理由はちゃんとあった。



3日ほど前の昼休み屋上。

「昨日中学のダチ達と対戦ゲームしたんだけどさ」
「うん」
「皆よっえーの!俺全勝だった!」
「うん」
「8人程居たんだけどさー」
「うん」
「いやー自分でいうのもなんだが俺強ー」
「うん」


ペラペラと自慢げに話す葉に、
興味なさげにジャンプを読みながら適当に返事を返す真。
このどーでもいい話はこれだけで終わると思っていた。
だが奴の、この言葉がいらなかった。いらなかったのに。


「だから真。お前にも絶対負けないわ、俺つえーし」


ああ、そうか。
今思えばこれは奴からの挑戦状だったのかもしれない。
あたしはハンパない負けず嫌いだ。

“お前には負けない”

この言葉に負けず嫌いな心が動かされないわけがなかった。

「いや…勝手に決めんなし」

その言葉を聞いた葉は楽しそうに笑うと、

「んじゃあハッキリさせようじゃねぇか」

とか言い出し、2人だけはあれだから助っ人を一人呼んで、今度の休日に葉の家でハッキリさせる約束をした。



まぁ、その約束の日が今日だ。
あたしの助っ人はぱっつん。
葉は…馨あたりを呼んでんじゃないか。
なんて考えてるといつの間にか葉の家。

鍵の開いてるドアを勢いよくあけて一言。

「たのもーう」

「お…おじゃましまーす」

「おっす。案外早かったな」

それぞれの挨拶を交わす。
その後ろにもう一人。
馨かと思って「よぉ」と言おうと思ったが葉の後ろから顔をを出したのは意外な人物だった。

「「あ…父さん?」」
「こんにちは」

ニコッと笑うお父さんにポカンとする二人。
意外だった。
葉は勝つ気があるのだろうか。
まあこっちにとっては好都合だよな。

「…あれ、雪ちゃんは?」
「あぁ。友達んち」

「ねね自由。雪ちゃんって?」
「あー…葉の妹」
「へー!柚木、妹いるんだー!」

葉には歳の離れた小学3年生の妹がいる。
それが雪ちゃん。
優しくて可愛くて礼儀とかもちゃんとなってて、葉には似ても似つかない。
…とまあ、そんな可愛い雪ちゃんは今はお留守らしい。
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