一転

□ほっと home
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まどろむ意識。
ほっかほかの体。

ここから出たくないと思う。
いや、正確には“出たいけど出られない”が正しいのかもしれない。
確かにそろそろここから出て行かなきゃいけない時間だ。
っていっても夜の8時半頃だからまだ大丈夫だとは思うけど。

でも出なきゃ。
ここから覚悟決めて出なきゃ、このままじゃ多分危ない。




そう、ここから出なきゃいけないんだ。
こっくりこっくりと勝手に動く首をどうにかしたいけど逆にこっくり動くのが気持ちいい。




こたつ、最高。


「姉ちゃーん、みかん食い過ぎだってー。俺のがなくなるじゃんー」

「そんな食ってねぇよ〜」

「食ってるよ!今食べようとしてるので8個目だよ!」

「え〜、まじでか〜」


そう言いながらも、黙々とみかんの皮をむくあたしの首は未だにこっくりしている。

ここから出なきゃいけない。
出なきゃ絶対このまま寝てしまう。
でも無理なんだ。
出たいけど、寒いから出れない。
そして眠い。

ピンポーン


家のインターフォンが鳴る。
今はばか親が二人共どっかに旅行しに行ってるから家にはあたしと弟しかいない。


「ん〜、ほっしーでて〜」

「その呼び方やめろって!てかなんで俺が」

「姉ちゃんは眠いんだ〜」

「ったく。しょーがねぇな」


ハァ……
と深い溜め息を吐くと「はいはーい」と適当に返事を返しながら玄関に向かう弟。

ああ、今の声は……
ぱっつん……か、


「お邪魔します〜」

「お〜勇者よ〜よく来てくれたな〜」

「ん〜」

そう返事をするとぱっつんももぞもぞとこたつの中へ。
とくに用があって来たわけではないみたいで、あたしと同じように首をこっくりこっくりしている。


「みかん食うか〜?」

「ん〜」


ころころとこたつの上でぱっつんのとこに行けとみかんを転がす。
うまく行ってくれてぱっつんはそれをキャッチすると、あたしみたいに黙々とみかんの皮をを剥き始める。



―――


――

―。



ああ、気持ちいいな〜
ほっかほか。
あ、あそこに二次元への入口が見えるぞ〜
よ〜し皆待ってろよ〜


ピンポーン


ん?
なんだ、何これクイズ?
なんか正解したっけ?

ピンポーン


うっさいな。
今幸せな一時を過ごそうとしてるってのに。


「―…ちゃん、」

おお、天からのお声??


姉ちゃん!!!!

「!!!?エンカウント!!?」


「「モンスターが現れたァ!!!」」


びっくりして咄嗟に叫んでしまったエンカウント。
まさかその後の台詞がぱっつんとハモるとは思わずちょっと嬉しい。

あ、じゃなくて、
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