一転

□観察日記
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10月23日

真ちゃん達がよく言ってる“泣き虫”って人に会う。

会ったまではいいけど話しかけられた。

場所は学校の屋上へ繋がる階段の所。


なんとなく屋上でゆっくりしようかと思って階段を上っていたところを話しかけられる。

出だしは確かこう。


「ねぇねぇ彼女!俺と一緒に遊ばない!?」


………ナンパ?


泣き虫さんってこんな性格なの?
そんな泣き虫さんのテンションについていけずにその場は一瞬静かになる。

いや、学校でその……
誘い方がなんか、、

いや、てゆーかなんて言えばいいんだろ…

「あ、のぉ…」

下を向いていた顔を改めて彼に向けると、
目にうっすらと涙が溜まっていたかのように思えた。
ポーズはさっきのまま、
一時停止。
さっきのポーズのままだが涙だけ浮かべているところがさっきと違う。


……そうか、これか…

これが彼が泣き虫と言われる理由なのか…


「ごめ、なさぃ」


実に言いにくい言葉だったけど、勇気振り絞って言いました。
あたし、頑張った。

そう言って足早に去っていくあたしを見て彼は涙を流していた。

そんな姿を横目にそのまま去ろうと思っていたら、3人くらいの女子が彼の下へやってきて喋りかけていて、動く足が止まってしまった。

彼女達はどうやら励ましているみたいだった。

「大丈夫ですよ馨先輩!!泣かないで下さい!!」

「そうですよ、私達まで悲しくなっちゃうじゃないですかあ、!」

「てゆーか私達がいるじゃないですか!!」


その言葉にピタッと泣き虫くんの小さく泣く声が止まった。

そして涙と鼻水を豪快に袖で拭くと、立ち上がり彼女達に向き直った。


「だよね!!!俺一人じゃないよね!!!
よぉっし、頑張るぞー!!!」



……いや、鼻水汚いし…





10月24日

休日の昼下がり。
愛犬の散歩でもって思って外をぐるぐる。

前まで吹けば涼しくて気持ち良かった風も今では肌寒い。
いつも散歩で通る公園のベンチに座って少し休憩しようと考え、
公園まで足を進める。


そこで聞こえた声、


「エンカウント!エンカウント!!!」


真……ちゃん?


「スキル!スキル!!」


この声は、聞いた事がない…



「いやSPやばいやばい!!」

「HPもやばい!!」


……何の話だよ、


って思っちゃって公園を覗いてみると、
あたしがいつも座ってるベンチに真ちゃんと、

あれは…斑加奈ちゃんかな?


その二人が座ってて。
別にゲームをしてるわけでもないのに二人はまるでゲームをプレイ中かのように叫んでいる。


「その遊び、楽しいの?」

「「モンスターが現れた!!」」

「だぁれがモンスターよ!!」

「のわっ、綾羽先輩?」

「何で疑問形なの?」


最近皆失礼よ。
人の顔見たら叫んで逃げちゃうし、
また人の顔みたらモンスター!とか言うし、
顔ちゃんと見てるのに名前呼ぶの疑問形だし。

失礼じゃない?


「散歩っすか?」

「まあそんなとこ」


ふぅー、と深く息を吐きながら真ちゃんの隣にぼてっと座る。

その隣の斑加奈ちゃんは不思議そうな目でこっちを見ていて、

あ、そういえば名乗ってなかったかな

って思って一応自己紹介をしてみる。

「あたし3年の綾羽礼未。
気軽にレミって呼んでね」

「は…はあ。
あ、私は…」

「斑加奈ちゃん、だよね?
よく真から話聞くよ〜」

「え!何て!!」

「相棒が昨日自分に〜」

「ああああああああ!!!ああ、あ や は ね 先輩ィイ!?」

敬語は使っているものの、
睨むその目は

その話はやめろ

とハッキリ言っていた。
から、ごめんごめんって笑ってその視線を吹き飛ばす。

そのあとは疲れたから二人とも別れて真っ直ぐ家に帰る事にした。
愛犬も疲れちゃったみたい。
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