一転

□悪夢は御免!
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「……真壁!!?」

「そうだよ。
何でそんなに驚いでるの?遠藤君」

「い、や…つかここなんでこんな暗いんだ?」



はっと気付いた時には目の前には真壁がいて、
楽しそうにらしくもないファッション雑誌を眺めながらパックのカフェオレを飲んでいる。


……見えるのか?
この暗さで。


俺はやっとお前の顔が見えるか見えないかぐらいなんだが。




「見ようとしないから見えないんだよ」


「………は?」


「ここにもし他にも人がいっぱいいたら遠藤君は、
ここに僕がいたって気付いてない」




……何を言い出すんだ。


目の前にいる真壁はただじっと雑誌を見ながら目線は全く変えずに何かを考える事なく喋っている。


真壁と俺の間を挟む机の上には、ぱっかり開いた煙草の箱が置いてあった。

それを見て驚くと同時に申し訳ない気持ちになった。


「見つかると、思って…」



「……」


「咄嗟にお前の鞄の中に隠した。」


「……いいよ。
気にしてない」


「でもそれでお前は…!!」




遅くまで毎日怒られて、毎日毎日学校に残って色んな課題やらされてたし、一人一人先生達に謝りに行ってたし。



俺は煙草を吸っていた。
そしてそれも見られた。
ラッキーな事に顔なんか見られてなくて。

でもその日、
俺達の学校では滅多にない持ち物検査があった。
すごくキッチリとした持ち物検査。
鞄から制服からキッチリ。


携帯なんかは何人か見つかって、
俺がいれた煙草も……





……煙草も、



真壁の鞄から見つかった。




煙草を吸っていた犯人は真壁。

教室中が一気に静まり返り、真壁を見る皆の目もまたひどく鋭いものへと変わった。




何で否定しないんだ?

俺が吸ってたところはお前にも見られてる。
なら知ってるだろ?


お前の鞄に煙草をいれたのは“この俺”だって事ぐらい。



何で驚かないんだ、何で平然としていられるんだ!


『いいよ、気にしてない』



……何で、


俺はお前の鞄の中に入れちゃったんだろうな…。



逃げずに、素直に
「俺です」
って、何で言えなかったんだろうな。


何で……!!


「見える?」


「え……?」


「僕の事、見える?」



その言葉で気付く。
辺りが少しではあるが明るくなっていた事に。
目の前の奴が真壁だってハッキリ分かるくらいに。


だから俺は真壁から聞かれた事にゆっくりと頷いた。


それを見た真壁は、
やっと目線を俺に向けてくれた。
今まで下しか見てなかった真壁がやっと。


そして、奴からは見たこともないふわっとした優しい笑顔で


「少しでも見てくれて有難う」


って言った。
何が何やら分からずにただぼーっとその言葉だけを聞いていたら急に視界が真っ暗になる。


「ちょ、おい、真壁!!」



もう何も見えない、何も聞こえない。





バサッ



「だあ!!はっ、ゆ、夢…かよ…」


頬には嫌な汗が大量に流れてきている。
服に張り付いていて気持ちが悪い。


運良く今日は休日だ。

「シャワー…浴びよ」

そしてとりあえずさっぱりしよう。



ああ、
悪い事…したかなあ、、




悪夢は御免!
―End。




↓あとがき
(どっちも夢落ちという…。真壁は遠藤と仲良くしたくて。遠藤も悪かったと思ってて。…仲良くすればいいと思います!)
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