一転

□悪夢は御免!
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「あれ?二人余る?あと一人は?」

「ほら、真壁だよ真壁!」

「え?いたっけ?」

「まああいつ影薄いし分かんねぇよな」

「つか薄すぎるだろ」

「ちょ、お前等聞こえるって!」







聞こえるよ。
もういいってくらい。

見えてるよ。
真壁、いたの?
っていう冷たい顔が。



影が薄い?
知ってるよ、
だって自分から目立たないようにしたんだから。




「よう、やっぱ斑がいねぇから寂しいか?」

「え、遠藤の知り合い?」

「はあ?何でこんな奴が」




まだ加奈ちゃんが引っ越す前。
僕が唯一加奈ちゃんに男らしいところを見せた時に一緒にいたのが遠藤君だ。
そして僕が負けずに言い返した相手も遠藤君。



苦手な人も遠藤君。


そしてその苦手な遠藤君と運悪く、いや、近所だから仕方ないのかもしれないけど同じ中学に通う事になった。



『もうさっくんは大丈夫だよ』


引っ越す前に加奈ちゃんが言ってくれたけど、
駄目だったみたいだ。

僕としては頑張ってる方なんだけどな、
目立たないって選択は間違ってないって思うんだけどな。



………違う?



僕の選択は間違ってる?

なら他に方法があったのか教えてよ。
誰かと関わりたくないと思うならこの方法が一番楽でしょ?


でももしそんな事を加奈ちゃんに言ったら、

『心が痛いよ?』

って言われそうだなあ…


ねぇ、会いたいよ加奈ちゃん。
少しでも一緒に話したい。
笑い方を忘れてしまいそうな僕に可愛かった、優しい貴女の笑顔を見てまた笑いたい。


それは、叶わない事なんだよね。


うわあ、涙で前が滲んでいく。
目の前の世界から君と過ごした色が消えていく。


『ねぇ、さっくん。


モノクロの世界は悲しいよ?』






うん、心が……ちくちくするよ…








「…あ、れ…?」





前はまだ涙で滲んでいる。
でも色がハッキリしていて。


………そうか、
夢だったのか…。


って気付いたのは涙をいっぱい流した後だった。
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