一転

□静かだったのに
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ギギィ…


屋上のドアが開く音。

ドアの向こうには眠そうに目を擦りながらフラフラーっと歩いてくる葉の姿。


「ったく、御栄の授業かったりーから隙を見て抜けてき………」


ピタッ。


「やあ。
屋上に何か忘れ物か?柚木葉。」


「…………た」


葉は顔をあげるとピタッと歩く動きが止まった。

目の前にはヤクルトと無理矢理正座させられたあたしの姿。


ヤクルトは必死に怒りを堪えながら葉に向かって笑顔を見せている。



ありえねぇ!!!


「うお!びっくりした…」

「急にでかい声をだすな!
まだ授業中だぞ!」



いーやいやいやだっておいこれ、ないって!


まじで葉が来たんですけど!
まじでサボって阿呆が一人屋上上がって来たんですけど!



「で?柚木?どうしたんだ?」


ヤクルトはそう言いながら葉の前に来て仁王立ち。
後ろから見てもなんか迫力があった。


閉まったドアのノブをもう一度握る葉。
逃げる気なのかあいつ…

葉と目が合う。
『俺の強さをよく見とけよ』
という顔をしていた。

イラッとしたが、
その顔に自信のカケラも感じ取る事ができなかった。



いや、助けてくれよそこ。
一緒に戦おうよ君。


そうアイコンタクトで送りたかったが、
もう奴にはあたしの目を見る事さえかなわないほどに目が死んでいた。


とりあえず助けて下さい葉くん。



葉はドアノブをクルッと回しドアの向こうに瞬間移動でもしたかのような速さで移動し、ドアを閉めながら、





「部屋間違えました」



そう言ってドアを閉めようとした。
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