一転

□憧れ
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「イチャイチャしてるとこお邪魔するぜ〜」


「あ、ひろくん・・・」


「ちょーど通りかかったらお前の幸せそうな顔みてムカッてきちゃってよ〜」


「・・・ぇ」


そう言うとひろ君は迷わず僕に拳を振った。



「痛!!」


「さっくん!!?」


慌てて倒れた僕を優しく起き上がらせてくれた加奈ちゃん。



・・・・情けない。



それはほんの数分前も思った事。




こんな自分を変えたいって。




でもいざ目の前にいるいじめてくる人を見ると、足ががたがた震えて。


奥歯もガチガチ震えて。



何もかもが震えて今の僕には立ってるだけで精一杯だった。




早くこの場から逃げ出したかったけど・・・





「っとお前」


「ちょっと、痛いってば!!」


「あっ、加奈ちゃん!!」



ぐいっとひろ君は加奈ちゃんの綺麗な長い髪を玩具のように躊躇無しに引っ張った。






突然怒りがこみ上げてきた。






勿論震えなんて止まらない。




ひろ君はいじめてくる中で一番すごくて、


皆加奈ちゃんが来たら逃げて行っちゃうのにひろ君だけは逃げないで逆に加奈ちゃんの上に行く。



そんなのが僕なんかに敵うわけないのに・・・




加奈ちゃんの痛みに歪む顔を見たら、
とてつもない怒りという文字で頭の全てを埋め尽くされた。


何も考える事ができない。




もう一人の自分が囁く







『ここで助けなきゃどこで助けるんだ?』



分かってる。今助けなきゃ加奈ちゃんが危ないって事くらい。



『じゃあ早く助けろよ。震えてんなよ』



分かってるって!
震えは・・・仕方ないじゃないか・・・。



『今日くらい・・・我慢しろ』



















「ああ、そうだな」






ひろ君はもう、加奈ちゃんに腕を振り上げていた。
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