一転
□不器用な弱い虫
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「いてッ!!」
ったー、血ーでてきたー。
こないだはまさか屋上行って生徒会の奴等とあんなふうに絡むとは思いもしなかったから正直疲れた。
それでも懲りずにのそのそと人目を気にしながら屋上に来る自分には流石に笑える。
「今日はブレザー必要だったかー…?」
しかもこんなに寒い。
俺が居るのは屋上と階段を繋ぐドアの上。
ドアの上っつーか…ドアの建物の上だよ、うん、そこ。寝転がれるしちょうど誰か屋上にきても高くて見えないし、いい場所。
「ファイトー!」
「ナイスシュート!!」
隣の体育館からバスケ部の応援している声が聞こえる。
その声と重なって別の部活動生達の声も聞こえた。
「夏希ちゃん、頑張ってっかなー」
そんな事を呟きながらぼーっといつもと変わらぬ空を見上げる。
ひれーな、空。
何でこんなに広いんだろう。
上も、何処まで続いてんだ。
空はでっかい、青い。
空を見ると、急に寂しくなる。
急に、そう、急に。
急に一人だけの孤独な世界に連れ込まれて、
そのまま小さな箱に閉じ込められちゃう気がする。
だから今も静かに空を見上げていると、その広い空に飲み込まれていきそうな気がした。
空はでかい。
でも俺にはでかすぎて、
ずっと見てると寂しくなって、
一人になったような気がして、
怖い。
弱虫だな、俺。
普通そんな事考えねぇだろって、小さく笑いながら顔の向きを地面に戻す。
いきなり現実に連れてこられたような気がして何かまた寂しくて、
紛らわすように舌打ちをした。
「ファイトー!!!」
「………ぁ、」
今の、
凜とした透き通るような、耳に残るこの声。
夏希ちゃんだ。
「へへっ」
そう思うと現実も寂しさもさっきまで考えてた事全てが頭から消え去る。
そしてどうしても顔がニヤけてしまう。
うわー夏希ちゃんだー
部活頑張ってるんだなー
「くくッ」
止まらない。
このニヤけが止まるのは、また寝転がって空を見上げた時だった。