一転

□憧れ
6ページ/8ページ



一週間後。





「え、引越し・・・?」




「うん・・・お父さんの仕事の都合で・・」




「そ、なんだ」




それは突然言われたことで、
何がなんだか最初はまったく理解できなかった。




今までずっと一緒だったのに。
やっと君を守れるくらいの勇気をもてる事ができたのに。



正直悲しかった。




「さっくんはもう一人でも大丈夫だよ」



「・・・そんな」



ずっと前から決まってた事だけど、




さっくんの悲しい顔が見たくなくて言えなかったって。





「いつ?」



「・・・今から」



「早い、ね」



「うん、ごめん」



何もしてあげられなかった・・・


もっと早くから知ってたら、何かしら

別れのプレゼント・・とか、



心の準備とか、できてたのに。



今、だって。



久しぶりにお家に呼ばれたから行ってみたらまさかこんな地獄が待っていたなんて。





辛すぎるよ、加奈ちゃん。




僕にはまだ・・・






「行くわよ加奈〜!」


「あ、うーん!」




車の方から加奈ちゃんのお母さんの声。



くるっと僕のほうを振り返る。




「ごめん、そろそろ行かなきゃ。」





「え・・・うん」




急いで車の方まで戻ると車のドアが開いてまた閉まる音。







そして僕のところまで来て止まってくれる。






「じゃあ、ばいばい」





「うん・・・ばいばい」





あっけない最後。






認めたくない真実をいきなり突きつけられたこの胸。




今にも張り裂けそう。







僕らの思い出はこれで幕を閉じた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ