一転

□憧れ
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「何やってるんだ!?」



「・・・あ」



通りかかった大人の人が声をあげる。



確かにこんなに加奈が叫べば通りかかった人が一人くらいは絶対に気付く。



その一人がやっと現れたのだ。




その声でひろ君は逃げるように走っていってしまった。







これって、僕の勝ち・・・?







通りかかった人ももういない。





「か、加奈ちゃん・・やった、!」




バシンッ




「え・・・?」




前がかすんでよく見えないってのに、
そんな僕に加奈ちゃんは容赦なしのビンタをきめる。








・・・・痛い。






「馬鹿!!何もやったじゃない!!」



「何で・・?」


「心配したに・・・決まってんでしょぉ・・・!」






拭っても拭っても、拭えきれない涙。



沢山の涙が加奈ちゃんの目から流れ落ちる。



落ちてはまた流れる。







そうか・・・


僕は一番大事な事を忘れてたみたいだ。




僕がよくても、加奈ちゃんの気持ち・・・

全然考えてなかった。




そうだよね・・

いつも弱気な僕があんなに叩かれて。

挙句の果てには自分から挑発するような事言って。



殴られるの・・・分かってるのに。





「・・・・ごめん」




「、許さない」



加奈ちゃんの目を見て謝ると、
涙をいっぱい溜めた目はサッと別の方を向いた。
目からまた一滴の涙が冷えた地面に落ちる。




「ごめん」



ぎゅっと抱きしめる。


悲しそうな加奈ちゃんの顔が見てられなくて。


そしたら涙を必死に堪えて


「ばぁか」



って。



声が、震えてたね。





加奈ちゃんも、怖かったんだね。




「うん、僕馬鹿だ」




「ば・・・馬鹿ぁあ〜!」




「いてっ、いたたたた!」





ぽこぽこぽこ!


と何度も、僕を叩く加奈ちゃん。



さっきのビンタに比べれば全然痛くないけど、


それが泣いてる顔を見られまいと必死に僕に背を向けさせようとする君が可愛くて可愛くて、



ついつい笑ってしまう。
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