一転

□憧れ
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「やめ・・・ろ!!」


ピタッ



「は・・?」


「さっくん・・・?」




僕は滅多に大きな声なんて出さない。



目立つから。




でも今は目立たなきゃ、僕という存在に気付いてもらわなきゃ、





腕は振り下ろされてた。






僕が叫んだから腕は、ピタッと止まる。





加奈ちゃんの顔は不安と驚きが入り混じった表情をしていた。





言えた!!






そう嬉しがるのも一瞬だけ。



ひろ君の鋭く痛い視線は一気に僕の方へと向いた。





・・・・怖い。




けどここでいつものように泣いたら加奈ちゃんが助けにきちゃう・・!


それじゃ駄目なんだ!



僕ならいくら打たれたって構わない。






でも加奈ちゃんには手を出さないで・・・








そんな願いはまたも一瞬のうちに叶う。




「ッ・・・!」



「さっくん!!無理しないでよ!!」



「う、ぅッ」



「ッさっくん!さっくん・・・!!」





何回も何回も。



僕が蹴られる度に加奈ちゃんは僕の名前を呼ぶ。



涙をいっぱい流しながら。






何で?
僕、こんなに頑張ってるのに・・・
何でそんな悲しい顔をするの?





・・・・分からないよ。








「今日は女がいるからか?えらく強気じゃねぇか」


「ぐッ・・」


「遠藤!!もう止めて!!私だけで十分でしょ!?」


「い、んだ・・・」


「えッ、?」




加奈ちゃんは地面にペタンと座り込んで

止めて止めて

って叫んでる。


僕は、





殴られて、蹴られて。


何でこんなことされなきゃいけないんだろうって思うけど。



それがやられる原因が僕にあって、
それに加奈ちゃんが巻き込まれて、
それを今こういう形で助けられているなら何も言わない。




だから、
止めないで。



僕を強い男の子にさせて。





「僕はいつも・・・助けられてばかり、だ」



「やっぱ女がいるからか」



「聞け!!、よ」


「!!?」



「何で僕がいつもいじめられなきゃいけないのかが分からないッ!
そんな僕を加奈ちゃんは助けてくれて確かに僕は情けない!」




そうさ、情けないさ。



僕は男の子なのに、女の子に助けられて




確かに情けないかもしれない。






でも・・・






「でもな、そんな弱い僕ばっかりいじめるお前等の方が誰よりも・・・・



かっこ悪い!!!!」





「な・・・・ンだとォ!!」





何かが切れる音。





「止めてぇえええええ!!!!」




加奈ちゃんが頭を抱えながら叫ぶ声。




僕のほうに向かって拳を振り上げながら走ってくるひろ君の姿。





力なく立てない足。







ぎゅっと目をつぶる。






後悔はしない。
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