短編

□瓶詰涙
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あたしとひよりは、高2のクラス替えのときに初めて接点を持った。
比較的賑やかなグループにいるあたしと、地味ではないけど大人し目なグループにひよりはいた。
仲良くなったきっかけは些細なことで、クラスで行われた席替えだった。
卒業まで席は固定だと担任が言うので、これからの学校生活を考えると必然的に強制的に仲良くならねばならなくて。
落ち着いた雰囲気を持っていたひよりに、あたしはどう話しかけようか考えたものだった。
実際話してみたときは愛想のいい態度の中に、ちょっとした警戒心みたいなものを感じたのを憶えている。
薄い線を周りに引いているような子。
愛想笑いじゃない顔が見たくて、あたしはそこに飛び込んでみたかった。
徐々に除所に仲良くなり、夏が終わる頃にはひよりはあたしに対して気を許していた。
愛想笑いをすることがなくなり、あたしに対してよく怒り冗談も言うようになった。
一緒にいるグループも違う、帰り道も逆方向。
気付けばあたしは、学校では出来るだけ席を離れずにひよりといることが多くなった。

ところが、あたしとひよりは仲がいいけど親友なわけではなく、位置的には友達以上親友未満といったところか。
ひよりの中でのあたしは3番4番目の存在で、実際はそれ以下かもしれないけどあたしの知るよしではない。
ちなみにひよりの見た目と中身を一言で言えば普通だ。
髪は肩につかないぐらいのショートカット、薄い体、ふっくらとした頬、奥二重の瞳、小さい鼻。
性格は花丸をあげたいほど良いってわけでもなく、とげのない性格をしている。
本人が言うには人付き合いが苦手らしい、全然そんな風には見えないけど。
誰よりも臆病で優しい、どこにでもいるような女の子。
それがあたしの好きなたった一人の女の子である。



そんな彼女に「嫌いでしょ」とか「避けてる」とか言われるのはなぜか。
理由は簡単、避けてるということが本当だからだ。
というのは2週間前の話、厳密に言えば避けていたが正しい。
ひよりがあたしへの好き度を知りたかった、というなんともふざけた理由で。
だが、あたしは本気だった。
あたしばっかり好きで、ちょっとだけ悔しくなったのだ。
だからこんな自虐的なゲームを始めたわけだが、それを後に後悔する。
おかげさまでかれこれ一週間もひよりに話しかけられないし、触れることも出来なかった。
結果は1週間、みじめで少しだけ泣いた。
こいつの中では一週間に一回話せればいいという相手なんだと凹んだ。
しかしよくよく考えてみるとひよりは人の態度に敏感で、あたしのこの態度をみて話しかけられなかったんじゃないだろうかと気付いた。
後悔しても遅く、あたしは家に帰り「ごめんひより、ああもうあたしほんとバカ!」と半泣きで呟きながら布団中で丸まり、そのうち爆睡し、またしても遅刻をした。
もうすぐ好きになってから1年が経つというのに、何にも進歩していない自分が情けない。
 
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