短編

□シロツメクサ
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神崎さんの恋人とは、平凡な庶民代表とも言える、新名あかりのことである。
つまりあたしです。信じられないけど。
もう平凡な人達の星と言われても過言ではない。
……調子に乗りました。過言かもです。
見事に神崎さんに落ちたあたしは、今や彼女の彼女。
女の子同士という、未知の世界を絶賛体験中なのです。
とは言っても、特別男の子と付き合うのと何ら変わりはないわけで。
少しだけ、周りの人の視線や気配に敏感になってしまうぐらいだ。
今はまだ大丈夫だけど、いつかひどく悩む日も来るのだろう。
そんなことを言えば、遅いとか、ぬるいとか言われるのかもしれないけど。
それはそれで、先のことだからいいんじゃないかなと思う。

放課後。
特にこれといった特別大きな連絡事項もなく、委員会は無事終わった。
ローファーに足をかけ、学校玄関の重いガラス度を押し出る。
出てすぐ校門には向かわず、グランドの木の近くに並ぶ花壇に足を運ぶ。
木の下で座っていた人物が、すくっと立ち上がるのが見えた。
あたしを見つけると走り、駆け寄ってくる彼女に少し笑う。
しかし、止まらないその速度に、まさかと思い足を止める。
そのまさかは的中し、笑顔であたしに飛びついてきて、あたしはよろけた。


「ニーナちゃん、お疲れさまー!」
「あ、ありがとう。って神崎さん危ないよ」


だけど彼女の手がしっかりと腰で支えられているのに気付く。彼女は本当に一枚上手だ。
身長も同じぐらいのあたし達の顔は物凄く近い。
離れない神崎さんはあたしの顔を見て頬を緩ませると、きゅっとあたしを抱きよせる。


「補給させてもらってもいいかな」
「え、ちょっと、神崎さん?」
「だって聞いてニーナちゃん。可愛い彼女が隣のクラスにいるのに、会えるのは選択科目だけだよ?やっと学校終わったし我慢の限界というか、だからこうして、補給」


ぽすっと肩に神崎さんの顔が乗る。重すぎず軽すぎずもしない、ちょうどいい重量感が心地いい。
……女の子同士抱き付き合ってるのは、傍から見ててもおかしくないよね?
あたしもおずおずと神崎さんにの背中に手を回す。
そうすれば彼女は嬉しそうにあたしを一層抱きしめる。
ふっと、肩が軽くなり、じりじりと近づいてくてる顔を手で止めた。
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