短編

□愛しさをこめて
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昔飼っていた犬の犬種は、ラブラドール。
3年前に死んでしまい、それから悲しくて動物を飼うのをやめた。
寂しくないのは学校が楽しかったり、一緒にいるようになったあの子のおかげなんじゃないのかなと思う。
あたしの好きな人は、年下でどこか犬っぽい。
どの辺が犬っぽいかと言えば、あたしを見つけると駆け寄ってくる所や、なでると大人しく身を寄せてくる。
見えない耳や尻尾が付いているようで、反抗的だったりしても実は喜んでたりと丸わかりだ。
たまに意地悪をしてみても、生意気な言葉の裏では赤くした顔が可愛い。
ああ、好きだなっていつも思う。


「夕季ー暇だー」
「暇って、菜月課題やったの?」
「いーじゃん、今自習なんだから。あとあと」


うるさすぎず、かといって静かでもない教室。
古典の先生は最初だけ顔を覗かせるとプリントを置いてどこかへ行ってしまった。
どうやら受け持ちのクラスでいざこざがあったらしい。
子供も大人も、やらなければならないことばかりで、大変だ。
とりあえず、あたしは目の前の友人にプリントをやらせたいけど、彼女は大人しく言うことを聞いてくれるだろうか。


「あ、夕季見て。体育やってる」


菜月の言葉に流され、窓から外を覗くと点々とグラウンドに生徒が集まっている。
えんじ色のジャージの学年は確か1つ下の学年で、あの背丈はきっと女子だろう。
そして、大き目のジャージを着こなしているあの子がいる。
もう無意識に探すのが癖になっていて、あたしは思わず笑みが漏れた。
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