短編

□ハッピーバースデイ
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「な、なんで不機嫌なんですか……!?」


と、藍澤が困った顔で尋ねてくるので


「不機嫌なんかじゃない」


と、顔に出さないように言った。
藍澤は困惑しつつ、あたしの後ろを小走りでついてくる。


「思いっきり不機嫌じゃないですか!」
「はあ?どこが!」
「どこがって、い、いつもより早歩きだし、口調がいつもよりも荒いです」


あたしは舌打ちをして、藍澤に口パクで「ばーか」と言った。
なんでこいつにはすぐバレるかな……そういうとこムカつく。
わけがわからないという顔をしている藍澤を置いてまた歩き出す。

事のはじまりは一通のメール。
5限目の現国の授業で眠気に襲われていたあたしはポケットに入っていた携帯のバイヴ音で目が覚めた。
携帯を開いてみれば差出人は、あたしの対角線上にいるはっしーからだった。
……はっしー暇なんでしょ、そう思いながらメールを開く。
するとなにやら画像の読み込みが始まり、添付画像がついているようだ。
本文には『これかわいー!』と一言だけ書いてあり、画面は読み込まれた画像に変わる。
画像にはクラッカーを持つはっしーと、ケーキを頬張ろうとしている藍澤が写っていた。
二人はまるで小学生のようで、ある意味可愛いとは思う。
藍澤は口を開けているのがなんとも間抜けに見えるけど。
……しかし、このメールに一つ思うことがあった。
素早くメールを返信すれば、返って来たメールには思った通りの言葉が書いてあって、思わず目の前の華奢な背中に手を伸ばしそうになる。
授業中じゃなかったら思わず低い声で藍澤を呼んでいただろう。
どうにかこうにかで我慢をして、今こうして一緒に帰っているのだけど
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