短編

□クオリアの欠片
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また入店音がする。
レジに客がきて商品と1000円札を渡され、340円のお釣りを返した。


「平出何時までだっけ」
「あたしは10時ですー」


じゃあ今のうちにやることやんないと。
10時以降は店長が起きなければ確実に一人だ。
今すぐ叩き起こしてもいいが、今後の為にもどうせなら借りを作っておきたい。


「平出、品出しとカラアゲ君揚げるのどっちやりたい?」
「カラアゲ君!」
「あ、つまみ食いするなよ。女子高生は特に太る」
「ひどっ!先輩ってば〜」


だって平出ちょっとぽっちゃり気味だし。
って、言ったらさすがに殴られるから言わないけど。
笑って流すと、各々の作業を開始し出す。
レジに客がくればあたしが入って会計をする。
そしてあたしはもくもくとカップラーメン、お菓子、つまみなどを賞味期限順に前出ししていく。

また入店音がする。
ジュースや酒は足りていそうだから、このままでいいか。
けど、冷蔵庫のドアの付近でジュースが入れ混ざっている。
たまにやられるけどこの作業は地味にめんどくさい。
直していけっつーの、そうぼやきながら黄色い炭酸飲料を手に持ち、隣の列から混ざったやつを抜く。
元の場所に押し戻し、ふっと人の気配を感じて視線をずらすと数年前に流行ったサンダルが目に入った。
未だ履いている人は多く、その人は赤だがあたしも白を持っている。

この人冷蔵庫見てんのかな。
一言「失礼しまーす」と言いドアを閉めようとしかけたそのとき、頭部に雷が落ちたような衝撃を受けた。
そしてすぐそのあと、缶が床に落ちた音がした。


「いっ!‥‥‥ったー……」
「わぁ!?す、すいません!!あ、あの!大丈夫ですか!?」


あたしは頭部に手をやり、カランと床に転がる缶が目に入る。
その横には少し汚れた赤いサンダルが目に入いる。
痛ってーな……客じゃなかったらボコってるぞこのやろう……。
すっと屈んであたしの顔を伺うように見てくるそいつを若干睨むように見た。
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