短編

□うららかな明日
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急いで家を出ないと、電車に乗り遅れる。
携帯電話を掴み、お気に入りのボストン型のカバンへ財布を放り込んだ。
コンバースの黒のスニーカーに足を入れ、玄関を飛び出すように走り出た。

――そう急いだにもかかわらず


『只今5分遅れで、駅を発車致しました。当駅の到着は13時27分の予定でございます。尚、列車の遅れは――』
「おはよー今日もハネてるね」


相も変わらず良い笑顔の先輩が手を振りながらお出迎え。
息を切らせながら駅の改札口に向かっていたあたしは、思わずその場に座り込んだ。


「時間通りで偉いよ。よしよし」
「……なんか、必死に走ってた自分が恥ずかしいんですけど」
「まあいいじゃん!間に会ったんだから」


そう言いながら、あたしのぴょこっとハネた髪をなでる。
あたしはその手をわざと邪見に払うと、先輩は笑い声を漏らしながらあたしを立ち上がらせた。


「素直なはじめちゃんがいいなー」
「すいませんね、素直じゃなくて」
「まあでもちょっと生意気なぐらいが可愛いよね」


「可愛くないっつの……」呟きながら頭を掻くと、また先輩はくすっと笑った。
「さていきますか」そう彼女はSuicaを取りだし、カードパネルにかざして駅のホームに入る。
彼女が歩きながら改札近くで止まり「早く」という言葉に、あたしは慌てて後を追いかけた。
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