短編

□君の未来予想図
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「はーちゃん先生。……はる!」



強めに額を叩くと
顔をしかめ痛いと言いながら、のそのそと起き上がる。
起きたのを確認し、先に教室を出て職員室に向かった。
後ろを振り返ると額に手を当てる先輩が


「静香せんせー。おでこ痛いんですけど」
「飯嶋先生がなかなか起きないからです」



だるそーに歩くその姿は、すらっとした容姿には似合わない。
顔は不機嫌そのもので、エプロンをつけていなかったら保育士には見えないだろう。




「けど子どもたちが見てたらびっくりしますよー。静香せんせーがはーちゃんせんせー叩いてる!怖いよー!って」



もし起きて見られたらどうするんですかと間の抜けた声で言われる。
うっ確かに……そう思うと返す言葉がなくなり、黙っていると




「あと保育園ではるって呼ばないでほしいんですけど」
「……すいません」



彼女の言うとおりで頭が上がらない。
2個年下だが仕事では先輩である彼女の言うことはもっともだ。
あたしは4大卒で、彼女は短大卒。
2年先輩の飯嶋はる、通称はーちゃん先生は笑顔が可愛くて愛想もいいと園児や保護者からも大人気。
職場の先生たちからも学生の頃からか知っているらしく、その頃から寝そうな顔をしてたらしいが……。
しかし園児達への愛情や熱意は誰よりもある。
自分の事には無頓着な所がある彼女だが、園児達には人一倍気にかけ常に笑顔で接している。
あたしに対しては全然態度にださないけど……。
なんでなんだろね、あれ。
あなたどんだけツンツンしてるのっていう。
ツンデレじゃなくて真面目にツンツンだしさ!
……話それたけどとにかく!
はるはみんなに好かれた存在なのだ。



「凹まないでくれますかー。あたしより上なんですから」
「や、でも、はるのが先輩だから!それにはるの言うとおりだし」
「……だから、はるって呼ばないでってば」
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