短編

□君の未来予想図
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あたしは人の笑った顔が好きだ。
なんだか自分まで笑顔になれて嬉しくなるからだ。



「せんせーこの絵本読んでー!」
「えーあたしは猫のお話がいいよー」

「じゃあどっちも読もうか!」


嬉しそうな顔をする可愛い可愛いあたしの園児たち。
絵本を2冊受け取り、大袈裟なリアクションをしつつ読み聞かせをする。
どんどん子どもたちも集まってきてみんな楽しそうに笑っている。
そのまるで小人の中に一人だけ大きい人も混じっていて
周りの純粋な園児達の浮かべる笑みの中、ぼーっと口を開けて見ている。
読み聞かせ終わるとさっきの二人の園児が抱きついてきて、両手で受け止めた。



「静香先生ありがとー!」
「どーいたしまして」


先生の読み聞かせ面白くて好きー、と笑顔で言ってくれる。
ああもうほんとに可愛いなあ!
そりゃあ保育士は大変な仕事だけど、こういう園児達の言葉であたしはやっていけてるんだなと思う。
それにこの子たちが笑っていると、あたしもずっと笑っていられる気がする。
元気の源なんじゃないかな



「あ、でもねーせんせー」
「ん?なあに?」

「はーちゃん先生寝てたよー」



……途中から見てないことにしたのに、子どもは正直だ。








君の未来予想図








お昼寝の時間になり園児達を寝かしつけたあと、全員眠ったか確かめるために辺りを見渡す。
うん、どうやらみんな寝てくれたようだ。
一人は教室内にいなければならないのであとの先生に任せ、教室を出ようとした。
しかし、園児の隣で口を半開きにして寝ている大きいのを見つけ溜息をつく。
周りの園児を起こさないように肩を揺らすが、また起きない。
おでこを軽く叩きながら耳元で



「飯嶋先生起きて下さい」



ぴくりともしない。
口だけむにゃむにゃと動いて目はあかず。
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