ハネモノ番外
□くだらない永遠
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白い壁にライトで囲まれた小さな箱は、魔法の箱である。
「だーっ! 狭いんだよ! 離れろ!」
「うるさいなー好きでくっついてるわけじゃないんだから! 大声出さないでくれるかな!」
顔をしかめて思わず言い返すと市川が「あ?」と睨みつけてきた。
あたしも同じく目を細め下から射抜くように見て「なに?」と応戦する。
もしここにCGを付け足すなら、間違いなく火花だろう。
小突いてくる市川に対し、強めにやり返していると「二人とも100円ちょーだい」とすぐ前から脳天気な声で言われた。
「ほらほら喧嘩してないでーはっやく早くー」
軽やかな口調であいが催促し、あたしはムッとした視線を市川に向けながらも財布から銀色の硬貨を一枚手渡した。
市川も渋々といった様子で渡している。
あいが400円を硬貨口に入れる。
その隣に立っていた菜月先輩は、画面の縁をコツコツ叩きながら尋ねた。
「えーっと写りはどうする? ナチュラルか、それともバッチリか」
「んー。市川もいることだし、ナチュラルですかね?」
「そうだね。じゃあ明るさはー?」
あいは「オススメよりも一つ明るめで」と言い、菜月先輩が画面をタッチしていった。
「背景はめんどいからセットでいいね」とさくさく決めていく。
市川がさも面倒臭そうに言った。
「なんで俺まで撮らなきゃなんねーんだよ」
「バンドメンバーで来たからでしょ」
「ちげーだろ! 飯食いに来ただけだろ!」
「うるさいなー……仕方ないじゃん女子といえばプリクラなんだから」
携帯電話、鏡、手帳など、いたるところに貼られているし、誰もが貼っているんではないだろうか。
もしくは貼ってある所を見たことがあると思う。
プリクラとはなんぞやと尋ねれば、女子高生はみな、これを青春の一枚というだろう。