教科

□全部僕のもの
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「ら…い、ぞう…」


「どうしたの?三郎」



雷蔵はいつもと変わらない笑顔で、三郎に微笑みかける。



「こ、れ…」


「ダメだよ、まだ」



雷蔵は読んでいた本を閉じ、手首を拘束された三郎のもとへ歩み寄り、自由の利かない三郎の顔を思い切り殴りつけた。

ガッ――



「っ!!」


「だって三郎酷いじゃない。三郎は僕のものなのに。兵助やハチに変装するんだもん」



バキッ――


抵抗できない三郎を何度も殴る。先ほどの笑顔からは考えられないような無表情で、しかしとても冷え切った表情で。三郎は最初こそ痛みに声を上げていたが、次第に今となっては不要と悟ったのか、殴られるだけとなった。
やがて殴る手を納めると、雷蔵は三郎の傷だらけの頬に手を当てて言った。



「ねぇ三郎。僕のこと…好き?」



コクンと頷く三郎。

バシィッ――

もう殆ど麻痺している頬にじんわりとした痛みが広がる。



「違うでしょ?ねぇ、本当に僕のこと好きなら口で言えるよね」



ふわりと笑って、再度三郎に問いかける。



「ね、三郎。僕のこと、好き?」


「…す、き…」



やっとの思いで紡ぎ出てきたその言葉に雷蔵は大いに満足したようで、満面の笑みを浮かべた。



「僕もだよ三郎!」



ボロボロになった三郎を愛おしそうに抱きしめる。手を拘束された三郎は、手を回すことも、拒むこともできない。



「三郎は僕のもの。この体も、血も、心も、僕だけのもの…誰にも渡さない…」



雷蔵はそっと三郎に口づけた。鉄の味が、ほのかに口の中に広がった。








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