愛をください

□友達
1ページ/2ページ

 


 
今日は、学校に行くのがほんの少しだけ、楽しみだった。
昨日初めて話した水戸くん。
今日は水戸くんに挨拶するんだ、って思って。
教室に入る前に深呼吸。
下を見ちゃう癖は治りっこないけど、
でも昨日までとはちょっと気持ちが違うんだ。
なるべく目立たないように教室のドアを開けて、
自分の席に行こうと、した。


「そーなんだよ洋平、それでよー」


でも、僕の席には既に先客が居て。
背の高い金髪の人、確か大楠、くん。
水戸くんとすごく仲が良くて
今も楽しそうに笑いながら話している。
邪魔しちゃだめだよね、でもどうしよう
僕はどこに居ればいいんだろう。
とりあえず教室出た方が、いいのかなあ。


「おー、片桐。はよ」

「え、あ、水戸、くん…!
お、おは…よっ」

「ああ。大楠、そこ片桐の席だろ、
来たからどいてやれよ」

「あ、そうなのか?悪ぃな片桐」


僕に気づいた水戸くんが、笑って声をかけてくれて。
なんとか挨拶すると、僕が座れない事に気づいてくれて
わざわざ大楠くんに言ってくれた。
大楠くんは立ち上がると、僕に謝ってくれて。
相変わらず僕は俯いてる事しかできなかったけど、
大丈夫だって伝えたくて、ぶんぶんと首を振った。






「なあ片桐、やっぱ顔上げんのは抵抗あんのか?」

「え…?」

「いや、大楠が気にしてたからよ」


授業が終わって、放課後の事だった。
日直で残ってた僕を見つけたらしく、
僕以外誰も居なくなった教室に戻ってきた水戸くん。
そんな中、不意に水戸くんは、僕に向かってそんな事を聞いてきて。
僕は少しだけ顔を上げて、水戸くんを見る。
首までなら、水戸くんなら平気。
まだ顔を見る事は、できない、けど。
でも他の人は……そのラインさえ到底無理な気がする。


「あの、えと………怒っ、てた………?」

「いや、怖がらせたんじゃねーかって。
あいつ案外そういうの気にするんだ」

「………う………えー、と………」

「んー………」


シャーペンを握りしめながら言葉に詰まってたら
大きい掌が、僕の頬っぺたに触れた。




 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ