愛をください

□出会い
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大事件、大事件、大事件なのです。
大事な事だから三回言いました。
もしかしたら普通の人にはごく普通の出来事かもです。
けれど僕にとっては重大事件です。


「大丈夫か、片桐?」

「え…………ぁ、う………」


あの後、えーっと、僕がお兄さん達にサンドバックにされそうになった後です
なんと学校で有名な不良さん、みとようへいくん、がその場に現れたんです。
なんで、とかどうして、とかがぐるぐる頭の中を泳ぎまわる僕を置いて、
みとようへいくんは流石というかなんというか
一人で、三人居たお兄さん達をこてんぱんにのしちゃったわけです。
それで、びっくりしすぎて腰を抜かした馬鹿な僕を見ると、
ちょっときょとんとしてから……………
手を差し延べてくれてるじゃないですか。
彼はひょっとして、とても慈悲深い神様か何かでしょうか。


「片桐?」

「…………、…………」


金魚みたいにぱくぱく口を開閉させては
アホ面でみとようへいくんを見上げる僕に彼はとうとう焦れたのか、


「よっ、と」

「ぅ、わ」


むんずと僕の腕を引っ張って無理矢理に僕を立ち上がらせてしまいました。
そしてまた少しきょとんとしてから、
怪我はないみたいだなとか言いながら笑うんです。


「…っ………、……ぅ……」

「ん?」

「………みとようへいくん、は、神様、か何か、なんでしょう、か」

「………はぁ?」


ああああ、僕の馬鹿、タコ!
どうして勇気を振り絞って、
ありがとうとかじゃなくてその台詞チョイスしちゃうんだよ!
みとようへいくんがこいつ何言ってんだよ電波じゃね?みたいな反応してる!!


「い、いえあの、なんでも………ないです………。
た、助けてもらっ、て、ありがとう………ござ、いました………!」

「いや………つーかお前、同じクラスだろ。
なんで敬語なんだよ」

「………、………ぉ、覚えてたんですか、僕の、事………」

「だから………あーもう、いいや。
隣の席だぞ、普通顔も名前も覚えてるだろ」


違う、違います、みとようへいくん。
それは全然普通なんかじゃないんです。
だって普通なら、僕はこんなに嬉しく思ったりしないです。


「それにお前、なんでこんなとこ通ってんだ?
もっと他に安全な道あるだろ」

「………ここ、通らないと。
スーパーの安売りに、間に合わないです」

「………………………」






 
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