進んでゆく物語

□03
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私は本を手に持ったまま硬直した。

まあ、そこに書いてあることを要約すると、こうだ。


私はトリップというものをしたらしい。
トリップとは、簡単に言うと異世界に行くことだそうだ。
この世界にいる間はこの家が住まいになる。
学校は行きたくなきゃ行かないでいいが、行きたいのなら近くの学校に通え。
生活費とかその他もろもろは通帳に入っているものを使ってよい。
残高が少なくなったら補充してくれるらしい。
ちなみに本の横にあった通帳を確認したらゼロが半端なかった。
まあとりあえず、要約すると生活の保証はするのでここで好きなように生活してくれってことだろう。

だがしかし元の世界には帰れない、と。何故だ。


私はその理由が知りたかった。
本には「すみませんが、元の世界には帰れません」としか書いていなかった。

普通の人ならここでパニックに陥りそうなところだけれど
私は元の世界に未練なんてない。

両親は私の心の中にいるし、友人は……まあ、離れるのが惜しい子は少しいた。
でもそれは難しいけれど諦めがつく範囲で。


生活の保証がされているなら、なんとかここでもやっていけそうな気がした。


「さて。これからどうしようか
……。」



ぽつりと呟いた言葉は誰にも届くことはなかった。


そうだ、学校はどうしようか。

いつもなら学校に行かなくても良いと言われれば喜んでいかないけれど
学校に行かねば暇な気がする。

今思えば学校という場所は暇つぶしの場所だったのではないかと錯覚するほどだ。


近くの学校を検索してみようとパソコンを開く。

どうやら最新バージョンのようで起動が思ったよりも早かった。
やっぱりデスクトップパソコンは画面が大きくていいなーと思いながら
カタカタとキーボードを叩く。

いつか“叩く”じゃなく“滑らせる”と言えるようになりたい。



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