進んでゆく物語
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彼女の声を聞いてみたい
彼女と話をしてみたい
彼女のことが知りたい
彼女に瞳に僕を映してもらいたい
彼女に僕の存在を知ってもらいたい
「誰、っ?」
気がついたら、声を掛けていた。
自分でも分かるくらいに、情けなく思うほどに、その声は震えていた。
そんな僕の声に反応して、彼女がこちらを振り返った。
もう少し、丁寧に言うべきだった、
もう一度、やり直したいと後悔した。
それほどまで振り返った彼女は美しくて
女神のような神々しさを持っていた
「悠木楓…」
誰、という僕の失礼極まる問いに対し、機嫌を悪くした様子もなく
彼女は自身の名前を告げてくださった。
“あなたは?”と問うような視線を向けてきた悠木さん
…いや、悠木様にハッとしてなんとか自分の名を呟いた。
「恭弥…雲雀、恭弥」
本当は苗字じゃなくて楓様と名前で呼びたいけれど
楓様、なんて呼ぶには僕自身少しおこがましい気がした。
「雲雀君ね、」
と確認するように繰り返す悠木様に、とてつもなく嬉しくなった。
柄じゃないのは分かってる
僕の名前を呼んでくれている、そう思うだけで心が歓喜するのがわかった。
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