狂詩曲−rhapsody−

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「……そういえば、またお前に首都栄転の話がきていると聞いたが」


紅茶を飲みながらサンダーランドがふと思い出して言った。


「これで何回目だ?」

「……さあ?自分でもわからなくなってきちゃって」

ショーが苦笑した。

「断ったのか?」

「勿論。」


彼女は何を思って、首都栄転を毎回断るのか。
サンダーランドには全てこそわからなかったが、
少しだけなら彼女の気持ちがわかっているつもりだった。

首都アカツキにはゴーシュ・スエードがいる。
長年会えなかった仲間と再び会えるというのは彼女にとって、願ってやまないことだろう。

しかし、彼女の大切なもの……いや、人はスエードだけではない。
守るべきものや大切にしたい人がユウサリ(ここ)にもたくさんある。

具体的に何なのかまではわからないが。


まあ何にせよ、自分のそばにいてくれるのは嬉しいこと限りない。

サンダーランドはそこまで考えると目の前で紅茶をすすっているショーに目を向けた。
思わず緩んだ頬をそのままに彼女を見ていると、彼の視線に気づいたのか目があった。


「嬉しそうね、サンダーランド」

「ああ。」

「どうして?」



お前がいるから、という言葉を飲み込んでサンダーランドは

「お前には教えん」


と笑いかけた。


「教えてくれたって良いじゃないー」

ショーは頬を膨らませて抗議をした。
そんな表情もサンダーランドには愛らしくしか映らない。



「もう少し、俺のそばに……」

サンダーランドは自分にも聞き取れない音量でつぶやいた。


その時。



――コンコン


部屋にノックの音が響いた。
サンダーランドはドアへ視線を向けると、少し不機嫌そうにした。


「はーい」


誰だろうとショーは呟きながらドアへ向かう。


「ショーくん!大変だよ!」


ドアを開けた先にいたのは、焦った様子のラルゴ・ロイドだった。


「ロ、ロイド館長?」


思わず確かめるようにロイドの名を呼んでしまったショーと同様に、
サンダーランドも彼の様子にただならぬ物を感じたらしく、目を見開いていた。



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