狂詩曲−rhapsody−
□12
1ページ/1ページ
自分の部屋へつくと、ショーはサンダーランドと飲むための紅茶の用意をし始めた。
カチャリと陶器が触れあう音をたてながら、ティーカップをテーブルにおく。
今日はアッサムにしようかダージリンにしようかと戸棚に置いてある茶葉を眺めながら悩んでいるうちに
そういえばサンダーランドはキャラメルティーが好きだったと、キャラメルの香りのする茶葉をポットに入れた。
ショーの紅茶をいれるスキルは相当のものである。
それはショーは紅茶が大好きで、幼い頃から紅茶をいれ続けているというのが主な理由だが
大好きなあまりに自分で紅茶のいれ方を片っ端から調べあげたことがあった。
「うーん、良い香り。」
ショーは上機嫌にそう言うと、椅子に座り本を読みながらサンダーランドを待った。
―――――――
―――――
―――
―
サンダーランドが来るのに、そう時間はかからなかった。
現に読み始めた本が数ページしか進んでいない。
扉からコンコンと音がして、サンダーランドの声が聞こえた。
「遅くなってすまない、ショー。」
ショーはすぐに扉を開けると
「ううん、大丈夫よ」
と笑った。
「紅茶の準備をしていたの。」
好きでしょ?キャラメルティー、と続けると
サンダーランドはよく覚えていたなというように驚いた顔をした。
彼は嬉しかった。
ショーが自分の好みを覚えていたことが。彼女の中に自分と言う存在がいることが。
そんな些細なことですらサンダーランドは喜ぶ。
それほどまでにショーに惚れているということなのだが、ショーは全く気づく様子もなくサンダーランドのことをよい友達としているようだった。
「しかし、本が開いてある。待たせたのだろう?」
幸せの余韻に浸っていたサンダーランドは再びすまないと言った。
「本当に少しも待ってないの。丁度良いくらいだったわ」
そんな彼にショーは気にしないでと笑いかけた。
「そうか。なら良かった」
サンダーランドも安堵した様子で視線を紅茶にやった。
ショーはその視線に気がつくと椅子に座りながらサンダーランドにも、座ってと促した。
「ふふ、ごめんなさい。紅茶が冷めちゃうわね。」
「熱すぎるのも飲みにくいからな、少し冷めたくらいが丁度良い」
ショーが紅茶を注いでサンダーランドへと渡した。
「どうぞ。」
「ありがとう」
自分の方にも注いだ紅茶は甘いキャラメルの香りがして心を落ち着かせた。
.