狂詩曲−rhapsody−
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“死骸博士”とほとんどの人が怖れるドDr.サンダーランドJr.専用の研究室
通称“解剖室(ヘルズ・キッチン)”
そこには二人の男女がいた。
男は何やら奇妙な生物らしきもの……いや、生物だったものを解剖し、女はその光景をちらちらと気にしながら窓の外を見ていた。
二人は背中合わせでたっていた。近すぎず遠すぎず、妥当な距離を保って。
「随分楽しそうね、Dr.サンダーランドJr.」
ふと、女が男に話しかけた。
「ジュニアを付けるな。博士と呼べと言っているだろう、ショー」
「はいはい、死骸博士」
「な……っ!」
死骸博士と呼ばれた男は、ムッとしたように口を歪めた。
一方、女――ショーは愉快そうに口を歪める。
「だって、ここ最近はずっと解剖ばかりしているらしいじゃない。そんなに解剖が好きなの?」
またショーがからかうように言うと、サンダーランドはさして気にした風もなく答える。
「最近は珍しい生物の死骸が多くてな。それに、未知の細菌も発見された。放っておくのは危ないだろう。」
「ふーん……随分と仕事熱心なのね」
「そういや、今日は君の相棒が見当たらないが」
一旦解剖の手を止めたサンダーランドが辺りを見回しながら言った。
「ロイド館長の所よ。貴方に会わせたら解剖されちゃうでしょ」
「……お前が嫌がるならそんなことしないさ」
「どうかしら」
ショーは、最近増えた新しい墓標を手に取った。
研究室の中は薄暗く、彼女の表情はよくわからない。
そんな薄暗い中でも手元を狂わせることなく解剖を続けられるサンダーランドは、流石と言えるだろう。
カラン、と金属音が部屋に響いた。
「今日はお仕舞い?」
「ああ、一応な。」
ショーがくるりと振り替えると、一仕事終えたサンダーランドJr.が手袋を外していた。
「ショー」
サンダーランドがショーを呼びながら手袋を取った手を彼女の方へ差し出した。
その仕草と研究室の薄暗さのせいか、いつもの彼の微笑が妙に妖艶に見えた。
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