狂詩曲−rhapsody−

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朝。

「ショー様、朝です。起きてください」

「ん……もう朝?おはよ」

「おはようございます」



ショーはシャルのモーニングコールで目を覚ました。
モゾモゾと寝袋から出て、隣を見ると
既にゴーシュは起きているようだった。



「ショー、やっと起きたんですか」

「あはは、おはよう。ゴーシュ」


ショーが起きたことに気づいたゴーシュは
朝食を温める作業から一度目を放し、ショーに挨拶をした。
その表情はやれやれと言った風である。



「今日は出発が早いのですから、さっさと支度をしてくださいよ」

「もう。わかってるわよ、言われなくても!」


ゴーシュは温めたスープの缶を手渡しながら言った。
ショーはそれを受け取りながら反抗期の子供のような台詞を言う。


昨夜の誰にも知られぬゴーシュの涙はどこへやらと言うように、彼は暖かく微笑んでいた。







朝食を食べ終えて、いざ出発の準備もととのった。


「じゃあ、出発しますか!」

「ショー様、荷物は俺が。」

「ん、大丈夫だよ」



シャルがバックを持つと言うが、ショーは“仕事道具だから”と断った。



「ゴーシュ!早くしないと置いていくわよー」

「元気ですね、ショー」


ショーが元気よく駆けて、ゴーシュを呼ぶ。
そんなショーを見て、ゴーシュは口許が緩むのを感じながらショーについていった。

ロダはショーと一緒にゴーシュの前を進んでいる。




丁度太陽が真上になった頃、彼等は分かれ道に差し掛かった。


「……分かれ道だね」

「ええ、ショーはどちらに?」

「私は町の方だから、こっちかな」


そう言ってショーは、立て札に“キャンベル”と書いてある方を指差した。


「そうですか…僕達は逆なので、ここでお別れですね」

「そっかー……じゃあ、ゴーシュ。ヘッドビー目指して頑張って!」


ショーは明るい笑顔で、ゴーシュを見た。
つられてゴーシュも微笑む。



「ショー……それでは、また。」


そう言いながら、ゴーシュはショーを抱き締めた。


「え、ちょ……っゴーシュ…!!」


ショーはどうして良いか分からず、されるがままになっていた。
やがて落ち着いたのか、ショーも自分の手をゴーシュに回す。


「……!」


ゴーシュは少し驚いた様子だったが、表情にはあまり出さなかった。


「じゃあ、またね」



しばらく抱き合い、ショーはゴーシュから離れると、シャルを連れて走っていってしまった。
ゴーシュはそれを黙って見送る。


「はい……また。ショー」


ショーが見えなくなると、自分もロダを連れて歩き出した。


ゴーシュの胸には、出世祝いにショーからもらったペンダントが輝いていた。
ゴーシュは大切そうにそれに触れると、また静かに口許を緩めた。



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