彼等の中心は彼女

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私が訊く前に景吾が答えを言ってしまうのは、いつもの事である。
わざわざ訊く手間が省けるので便利だとは思う。

私は妖しく笑って見せた。



「じゃあ、家城さんが消えても、景吾は困らないわけだ?」


そう言うと、景吾は形の良い眉をピクリとゆらした。

「お前は、家城を消そうとしてるのか?」

「……だったら?」

「喜んで協力してやろうじゃねえか」


今まで不快げだった景吾の表情は、少し和らいだ気がした。

「なあ、涼香」


景吾は私を呼ぶと、

「巧言令色」

と呟いた。
それから私を見遣って、続きを知っているかと目線で問い掛けた。

私を侮(あなど)ってもらっては困るな。
私は自信満々に言った。


「鮮(すく)なし仁、でしょう?」


すると景吾は嬉しそうに笑った。

「家城さんは、見るからに仁が少なそうだけれど」


どう思う?

そう景吾に尋ねると彼はアーン?と眉を上げた。

そんな彼に、いつまで経っても変わらないなと
私はおもわず笑みをこぼした。

「まあ、アイツは心にもない世辞など使えそうなタイプじゃねえが、
ミーハーだと言うことを隠しているようだ。隠しきれていないがな。」

「つまり、そういう人間は“どこかで必ず化けの皮が剥がれる”……そういうこと?」


私は景吾の言わんとする言葉を先取りした。

景吾は相変わらず椅子に深く腰かけている。
足を組んでその上に両手を重ねる様は、とても中学生には見えない。



「涼香はものわかりが早くて助かるぜ」

「はは、光栄だね。ありがとう。」

景吾が誰かを誉めるというのは珍しい。
私は素直に驚いた。


「それで、家城さんを追い出す計画なんだけれどね」


私は本題を提示した。


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