彼等の中心は彼女

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目が覚めたら、いつもと変わらない見慣れた天井だった。

その事に安堵しながらも、私はベッドから這い出た。


パジャマのままトントン、と階段を降りると
フレンチトーストの甘い香りがした。
チラリとダイニングの方を覗くと、期待を裏切らない美味しそうなフレンチトーストが焼きたての状態でおいてあった。
自然と広角が上がるのは、甘いものが好きだから。


ちなみに、これを作っているのは私の母親ではなく
長年我が家にいるメイドさんだ。

私の両親は仕事で忙しいらしく、滅多に家にいない。
だからと言って家族仲が悪いと言うわけではないから別段私は気にならないけれど。

やはり人並み以上に稼ぐ人というのは人並み以上に忙しいらしい。大変かどうかは別として。





「あら、涼香ちゃん。おはよう」

「おはようございます、奈津子さん」


言い忘れたが、メイドさんの名前は奈津子さんと言う。
見た目は三十代半ばだが、実際は五十を過ぎている。


私はまず洗面所に向かい、洗顔をしてから朝食をとった。




「ごちそうさまでした」


そういうと、奈津子さんは返事の代わりに笑顔をくれた。


食器は最近来た執事の人が
下げてくれる。名前はまだ覚えてないな…なんだっけ。
確か年齢は二十歳いかないくらいだったと思うけれど。


髪をとかしたり歯を磨いたり色々してから私は二階へ戻り、制服に着替えた。
着替えが終わった時間は7時少し過ぎといったところか。

氷帝までは車で15分弱といったところなので余裕で間に合う。


紅茶でも飲んでから行こうかな、と考えていると目の前に紅茶が置かれた。この香りは…レディグレイかな。


「涼香様、出発までまだお時間がございます。
レディグレイです、どうぞお召し上がりください。」


声の主は、あの執事くんだった。なかなか気が利くらしい。
うちの執事とメイドさんたちは優秀で助かるね。



「じゃあ、頂こうかな。」


そう言って、私は紅茶をすすった。
紅茶の味は予想以上に美味しかったと言っておこう。








紅茶を飲み終えると、いつもの登校時間になっていた。

「そろそろ行こうか…」


そう呟くと、奈津子さんが出てきた。



「涼香ちゃん、御車の準備できてるわよ」

「いつもの事ながら感心するよ」

「あら、ありがとう。じゃあ行ってらっしゃい」

「…行っ
てくる」



奈津子さんと会話を終えて、私は玄関を出た。
目の前には何のためにこんな広くしたのかと言いたくなる庭と、車。
それと、当然のように車のドアを開けて待っている執事くんがいた。



「涼香様、お気をつけて行ってらっしゃいませ」

「ああ、うん」


執事くんに軽く微笑んでから車に乗ると、出発する直前にそう言われた。

車なのにどこをどう気を付けろって言うんだ。そもそも、毎日同じ道だろうに。

そこまで考えると、執事くんは過保護なんだという結論に至った。



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