刀剣乱舞

□いつもと違う君
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手薄になっている時を狙ったのか、本丸が検非違使によって襲撃された。


知らせを受け遠征から急いで戻ると、血塗れで倒れる主の姿を見て 全員が肝を冷やした


襲撃から今日で2日が経つ。交代で主の容態を見守っているが一向に起きる気配が無い



「いち兄……主さん、まだ起きないの…?」


「あぁ…もう休みなさい。まだ完全に回復していないのだろう。主のことは私が見ておくから」



涙を浮かべる弟達の頭を撫でると、渋々といった表情を浮かべながら主の部屋から出て行った


襖が閉じると、再び部屋は静寂に包まれる。腕や首に巻かれた包帯が痛々しい



「ん……っ…」


「はっ…主!私のことが分かりますか!?」


「一期さん…」


「あぁ、良かった…本当に……ッ…」


「いたたた…うわ、ボロボロ」


「まだ起きてはなりません。安静にしていて下さい」


「大丈夫、他の人達は無事ですか」


「はい。蛍丸殿も回復しつつあります」


「そう…良かった」


「申し訳ございません…もっと早く戻っていれば、主は怪我をせずに済んだのに……!」


「いえ。遠征に向かわせたのは私です。それに本丸が攻撃を受ける可能性を考えていなかった私にも責任があります」


「ですが!」


「蛍丸さんや貴方の弟達も、私を庇って怪我をしました。謝るのは私の方です」


「………違う…」


「誰も折れなくて良かった…」


「違います!!」


「っ…い、ちご…さん?」


「確かに誰も折れなかったのは良いことです…!ですが、貴女は怪我を負った!危うく命を落とすところだった!」


「そう、ですけど…そこまで深い傷では……」


「貴女は人間で、私達とは違う!大きな怪我をすれば治るのに長い時間がかかる!」


「ッ…」


「もっと自分を大事にしなさい!!」



感情的になってしまい、口から出た言葉はあまりにも棘のある言い方になってしまった



「っ…申し訳御座いません…主に不躾な言葉を…」


「いえ…」


「少し頭を冷やして参ります…他の者を呼びますので主はどうか安静に。本当に申し訳御座いませんでした」


「ま……って…待って、下さい…」



膝を抱え俯いたまま蚊の鳴くような声で呟いた。声も体も震えてて、再び姿勢を正し 主に体を向ける



「ッ……ごめんなさい…本当に……貴方の言う通りです……」


「主に対して あのような無礼な口をきいたこと、心よりお詫び申し上げます…」


「謝らないで下さい…貴方は間違ったことを言っていません……あの、一期さん…」


「はい」


「ありがとうございます…叱ってくれたこと、心配してくれたこと……感謝します」



瞳に溜まった涙を見て手を伸ばそうとした瞬間、勢いよく襖が開いて大勢が顔を覗かせた



「今すっごい声聞こえたよ!?」


「い、一期さん怖すぎます…」


「いち兄が泣かしたの!?」


「こ、これは その…!」


「それにしても君も声を荒らげることがあるんだな、驚いたぞ」


「うむ。離れていても声が聞こえたな…はっはっはっ、一期一振に叱られたか主よ」



部屋に入ってきた彼らに主は囲まれ、触れることすら出来なくなった。


子供のように泣く主を弟達が抱き締めたり、頭を撫でている



「残念だったな。慰める役は君の弟達に取られてしまったようだ」


「えっと、その…」


「主を叱るとは…君もなかなかやるな」


「うっ…」


「気持ちは十二分に主に伝わっただろう。まっ、暫くは君を怯えるかも知れないが」


「それは困りますね…」


「っ…ご心配をおかけしました…」


「主さんが無事で本当に良かったよー!他に痛いところない!?」


「大丈夫…乱ちゃんありがとう」



主が目を覚ましたので今夜は宴だと皆が盛り上がっているなか、主の手がそっと触れた



「一期さん、ありがとう」


「いいえ。主が ご無事で何よりです」



添えられていた手を握ると、まだ涙を薄らと溜めたまま彼女は微笑んだ


――END―――

大声で怒る一期さんが見たかった…だけ。

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